3年ぶりに春季愛知大会を制した中京大中京。
そのエースナンバーを背負うのが3年生の浅野文哉。
185センチの長身から投げ下ろす角度あるボール、そして抜群の制球力が最大の魅力。
去年、夏の甲子園。
当時2年生だった浅野は早稲田実業との一戦で先発のマウンドに上がっていた。
しかし、まさかの7失点。1回ももたずに降板し、悔しさだけが残るマウンドとなった。
「正直マウンドから逃げ出したいという気持ちがあった。中京野球部という伝統のある野球部で情けないピッチングをしてしまって、申し訳なかったです」
あの夏から1年、3年生となった浅野はエースとしてチームを引っ張っている。
そんな浅野が去年の冬から取り組んできたのが制球力の向上。
そのために徹底的に筋力トレーニングや走り込みを行い下半身の強化に努めてきた。
さらに球に角度が生まれるように、ヒジの位置を高くするフォームの改良に取り組んできた。
ボールに角度がつくことで、バッターはより打ちづらくなる。
185センチの長身を生かし、さらにヒジを高く上げるフォームを追い求めた。
迎えた夏の前哨戦となる春の県大会。
この大会でベスト8のチームには夏の県大会でのシード権が与えられる。
中京大中京は順当に勝ち上がり、愛工大名電に勝利を収めベスト4に進出。
準決勝の相手は私学4強の一角、東邦。
浅野にとって、冬から取り組んできたピッチングフォームを試すには絶好の相手。
しかし持ち前のコントロールが安定しない。フォアボールを与え幾度となくピンチを招いてしまう。
3回には満塁ホームランを浴び、9回を投げ4失点。
勝利を収めたものの、ピッチングには課題が残った。
続く決勝戦、8対8の同点で迎えた8回、エース浅野がマウンドへ。
ゲーム終盤の1点が勝敗の行方を左右する場面で、2塁1塁のピンチ。
だが、そんな状況にも関わらず浅野の表情から焦りは感じられなかった。
続くバッターを落ち着いたマウンドさばきで打ち取り、愛知啓成打線を退けた。
「去年の夏の経験が生きたのか分からないですけど、少し自分のなかに余裕があった。
どうやってバッターを打ち取ろうかと冷静に考える事が出来たので、それが良い結果に繋がったのかなと思います」
春の大会の反省を踏まえ、改めてフォームを見直している浅野。
去年のリベンジを果たすべく、再び甲子園のマウンドへ…