「インテリジェントで、単に生産的なプレーをするだけでなく、キープ力があり、アシストが出来る。さらには決定力も持っている。我々はより良いプレーをすることが出来る、藤本が居れば」
ストイコビッチ監督が渇望した才能の持ち主、それが藤本淳吾。
2010年度のベスト11に選出された現役の日本代表。彼の加入は、リーグ連覇、そして、アジアクラブ王者を目指すグランパスの必要不可欠な要素だった。
高いテクニックを誇る、レフティー。自らドリブルで仕掛けて、チャンスを作りだす。さらに、プレースキックの名手がFKで描く軌道は、芸術的ですらある。その強さと巧さが出た場面がある。
5月4日 ACLホームでの杭州緑城戦。後半32分。藤本からの精度の高いロングキックにFW久場が反応し、PA内に絶妙の飛び込み。相手GKがこれを阻止しようとファウル、グランパスはPKを獲得した。このPKのキッカーは藤本。淡々とゴール左隅に決めたものの、藤本が蹴る直前に味方がPA内に侵入し、PKは仕切りなおしとなる。
2回目のPK、藤本は1回目と同じゴール左隅に、決めて見せた。巧さと強さ―。
藤本淳吾
「PKはそうですね。プロになって1回だけはずしたかな」
「いや、まあチームメイト(がPA内に侵入してのやり直し)だったんで。まあ、‘おいっ’とは思いましたけど。もう1回かあ、って。」
「いや。でも落ち着いてキーパー見て。しっかり、キーパーが飛んだ逆のほうに蹴るなり、ずっと動かなかったら、端っこに蹴るだけなんで、まあそんなに、うん。緊張とかはなかったです。まあ、大事なPKとは分かってたんで」
今シーズンのグランパスで藤本は中盤の核となることを期待されている。
移籍の時、指揮官に言われたのは
「どこでも出来るとは言ってくれましたけどね。サイドでも、真ん中でも。‘半分より前’って」
藤本は今、これまでのサイドではなく、慣れないボランチのポジションも務める。
「違和感はまあ無くはないですけど、とりあえずそのポジションだったら、優先順位があるんで、その役割をしっかり全うするというか、最低でも。それプラス自分の色を出せればと思いますけど」
まだ、葛藤の中にある藤本。しかし、藤本の目はその先を捉えている。
「こうやって苦戦して、壁にぶち当たることもそれは成長に繋がると思うし。そういう意味では、今は充実している」
「自分がしっかり名古屋のサッカーをやりつつ自分の良さも出せるようにっていう」
「それはあとちょっとすれば出来ると思うんで」
「気持ちの問題じゃないですかね」
「自分が仕切るくらいの気持ちでいればいいと思う」