放送内容

2011年06月25日(土)放送

中日ドラゴンズ 荒木雅博 「スタイル」

カテゴリー:野球

球団史上初のリーグ連覇を目指すドラゴンズは、
現在2位と絶好の位置につけている。
開幕からおよそ50試合、打線がなかなか機能しない中、
チームをここまで引っ張ってきたのが不動のリードオフマン
荒木雅博である。
「トップバッターとして自分の態度というのはチームに影響を与えると
思うから出来ることは全てやっていこうと思います。」
連覇のカギを握る男の素顔とは・・・。

5月、荒木は14試合連続安打を放つなど打線のキーマンとして
チームを引っ張った。月間打率はリーグ2位の.384。
2年越しの挑戦が、結果となって表れた。

去年、シーズン序盤からバッティングの調子が上がらなかった荒木は
夏場を迎え大胆な打撃フォーム改造に着手する。
挑戦したのはバットを体の前でゆったりと構える神主打法。
落合博満監督が現役時代三冠王をとった、あのバッティングフォームである。
しかし荒木が神主打法に取り組んだきっかけは意外なものだった。
「年もとってきたし、このままじゃ長いことできないと思って
現役長いことやった人誰かと考えたら、監督だった。」
現役生活を長く続けたという理由で監督のフォームを真似た荒木。
この思い切った挑戦が大きなプラスとなった。
8月、9月と2ヶ月続けて3割を超える打率を残し、
これまでにない手応えをつかんだ。
「バッティングで今までにない感覚があった」

そして今シーズン、4月は苦しんだが5月に入って結果が出る。
5月終了時の打率は.326でリーグ3位。
落合ドラゴンズで打撃コーチを務めたこともある野球解説者の
宇野勝さんは進化した荒木のバッティングを高く評価する。
・右足に体重が乗せられるようになって変化球に対応できるようになった。
・上半身と下半身の動きがズレ、体にねじれができ強く振れるようになった。
しかし本人は・・・。

「いいのか悪いのか分からないですね。何に気付いたのか、
これが分かったとか、これつかんだとかは一切ない。」

返ってきたのは思いもよらぬ答え。
荒木の中では、こうすれば打てるという確証は、まだないのだ。
それでも結果は出ている。なぜなのか?
荒木は5月に入ると試合前のフリーバッティングのやり方をミックスに変えた。
ミックスとはストレートと変化球をランダムに投げ込むもの。
より実戦に近い状況を作り出し、打てる確率を少しでも上げようとしているのだ。
さらにバットを握る右手にも打つための工夫がある。
振る直前まで右手をしっかり握らない。
緩めておくことで、余分な力みを取り除きインパクトの瞬間だけに力を集中するのだ。
決して打てるコツをつかんだ訳ではない。しかし、打つための努力は怠らない。
この姿勢が結果につながっているのだ。

「高校のころ雨が降ろうが、台風が来ようが毎日15キロの道のりを
自転車で往復したところから始まっている。」
「やろうと決めたら、最後まで一人でもやり抜く。
それが(プロ野球の世界で)ここまでやれている要因だと思います。」
今でも試合前の練習では、照明もついてないグラウンドに
主力野手の中で一番初めに姿を現す。
やるからにはとことんやる。それが荒木のスタイルである。

6月に入り、打撃の調子を崩し23打席ノーヒットで交流戦を終えた。
すると、リーグ戦再開を控えた練習日には志願の居残り特打ち。荒木らしさを見せると、再開後の試合できっちり26打席ぶりとなるヒットを放ってみせた。
そしてこのヒットで、大きな節目となる1500本安打まであと60本となった。

「1000本も打てないと思ってやってきた野球人生だから、すごいことですよ」

出来ることは最後までやりぬく。
プロ16年目を迎えたリードオフマンは自らのスタイルで
これからもチームを引っ張っていく。