セットアッパー浅尾の名前がコールされた瞬間、
ナゴヤドームのスタンドは最高の盛り上がりを見せる。
「とてもいい場面で投げさせていただいていますし、
そうじゃないとしても試合に出られる喜びがうれしいですね」
チームの勝利に欠かせない男、浅尾拓也。
その活躍の裏にある真実に迫った。
去年4年ぶりにリーグ優勝を勝ち取ったドラゴンズ。
その中で浅尾が果たした役割はとても大きなものだった。
開幕からフル回転し、チーム最多登板記録を更新する72試合に登板。
日本新記録となる59ホールドポイントを挙げるなど優勝の原動力となった。
プロ5年目となった今シーズンも8月5日現在、
チーム最多の45試合に登板し防御率は驚異の0点台。
申し分のない結果を残している。ところが・・・。
「去年に比べれば全然落ちていると思いますし、ずっと調子が上がらなくて、その中でやっていかないといけないんだなと思っていた」
初登板となった開幕戦では3安打を浴びサヨナラ負け。
シーズン序盤、本来のピッチングが出来ずに苦しんでいた。
「その時期悩んでいて、どうやったら自分が思うような投球が出来るかと
考えていたときに、佐伯さんが敵チームから見て拓はこういう風だったと
言ってもらって、そうあるべきだなと・・・」
今シーズンからチームに加わったプロ19年目のベテラン佐伯からの一言。
去年まで対戦していた敵だからこそ分かる浅尾のすごさ。
「簡単に言えば思い切り投げろ見たいな。
本来そういう風に投げていたものを、投げられなくなっていた自分がいたので」
5月中盤から始まった、交流戦では15試合に登板して失点0。
佐伯のアドバイスをきっかけに考えすぎて見失っていた自分の姿を取り戻した。
浅尾の今シーズンの登板数はすでに45試合にのぼる。
これは去年更新したチーム最多登板を上回るペース。
続けて活躍をする事が難しいセットアッパーというポジションで
2年連続のフル回転。結果を残すのには理由がある。
「毎日毎日、積み重ねていくと疲れも溜まってきますし、
その疲れを極力減らすという風に、教わってきたのでそれは気を付けています。」
7月13日、神宮球場。
2点ビハインドの5回裏、浅尾がブルペンに姿を現した。
まずストレッチで体をほぐす。そしてピッチング。徐々に力を入れていく。
しかし結局、ブルペンで投げたのは12球。ここでピッチングを終えた。
「毎年こうやればいい結果が出るとか、もう自分の中でありますし
1回目は12球と決めていますね。」
どの試合でも最初のブルペンでの投球数は12球。
ここに鉄腕・浅尾の秘密が隠されていた。
「1年目とか20球近く投げていたので、それが年々減っていって
たぶんもうこれ以上減ることはないですね。頑張って減らしてそれ(12球)ですね。
減らして肩が出来上がるのがその球数です。」
疲れを少しでもためないために、ブルペンでの球数を極力減らす。
経験から導き出された12球での調整法。
連投にも耐えられるように行われている浅尾の工夫である。
「中継ぎにはむいていると思います。肩が出来るのも早いですし、
毎日試合に参加したいという気持ちが強いので・・・」
今週の木曜日、1点リードの8回からマウンドに上がった浅尾は
4試合連続登板にもかかわらず、きっちり仕事を果たした。
日本一のセットアッパー浅尾拓也。
チームの勝利へ、これからもマウンドに上がり続ける。