8月27日横浜スタジアムでのベイスターズ戦。
先発の吉見は見事なピッチングをみせ、
節目となる通算50勝を今シーズン初完封で飾った。
プロ6年目の今シーズンも着実に勝ち星を積み重ねる吉見一起。
勝利をつかむそのピッチングの極意に迫った。
今年、吉見は去年オフに行なった右ひじ手術の影響で大幅に出遅れた。
それでも開幕3カード目となった4月20日のスワローズ戦で
今シーズン初登板を果たすと、
その後もほぼローテーションを守り9月2日現在18試合に登板。
4年連続の2ケタ勝利を達成するなど、
右ひじ手術の影響を感じさせない活躍をみせている。
そこに隠された工夫・・・。
「10割で投げるのと7、8割で投げるのとではスタミナの持ちかたも
違うと思うし、要所要所でしっかり投げておけばいいかなという思いで
今年は投げています」
不安のある右ひじの負担を考え状況を見ながら力の入れ方を変えている吉見。
それでも勝てるのはこれまでの経験があるから。
「今までの財産というか経験がすごく生きているかなと思います。今年は・・・」
さらに投手陣を預かる森ヘッドコーチが吉見が勝てる理由を明かしてくれた。
「アウトコース低目、インコース低目、それからアウトコースの高目と
インコースの高目4つのコースへ狙って投げられるということ。
その高目のボールを生かしたピッチングができる。」
今シーズン初完封を挙げた8月27日のベイスターズ戦。
6回のピンチで迎えた5番ハーパーの2球目。
キャッチャー谷繁の構えたインコース高目へストレートを投げ込みファール。
ノーボールツーストライクと追い込むと、最後は低目のフォークで三振。
見事にピンチを切り抜けた。
「しっかり目付けを上にしておくことによって、ストライクゾーンの幅は
広がると思うので、年々ピッチングの幅が出てきたというか
引き出しが増えてきました」
そしてもうひとつ。今シーズン吉見の帽子に書いてある[無気]と言う言葉。
ここまでチームトップの勝ち星を挙げているが、その喜びをマウンド上で
表したことがほとんどない。意識して感情を抑えている。一体なぜなのか。
おととしのクライマックスシリーズセカンドステージ。
第3戦の先発マウンドに挙がった吉見は強打の巨人打線を抑え込んでいた。
しかし6回、4番ラミレスと5番亀井に連続ホームランを打たれて
マウンドでしゃがみ込むでしまった。
「あの時、まだ同点なのに負けたかのような仕草をしていたみたいで
岩瀬さんに言われたんです。
お前は淡々と投げなければいけないタイプだよと。
去年もやろうと思ったんですけど出来なくて。
今年もう一回やってみようと思って、なるべく嬉しくても出さないように
悔しくても悔しがらないようにしています。
正直、感情を出さないのがいいのか悪いのか分からないです。
でも貫こうと思っています。」
経験という財産とストライクゾーンを最大限に使いバッターを打ち取る
投球術。マウンドで見せる淡々とした冷静な姿。
これが吉見の勝利をつかむピッチングの極意。
そしてもちろんチームの優勝へ向けこれからも勝利を積み重ねるつもりだ。
「先発という立場でやる以上投げるからにはゲームをつくるんじゃなくて
勝てるように、尚かつ自分に勝ちがつけられるようにしたいなと思います」