中京大学水泳部。
元オリンピック代表の高橋繁浩監督のもと、これまでに松田丈志など世界で活躍するスイマーがこのプールから巣立っていった。
去年の学生選手権、男子が初の総合優勝を成し遂げる大快挙。 インカレ史上で初めて、関東以外の大学が頂点に輝くという、新たな歴史を作り上げた。
そして今年、中京大が掲げた目標が「男女アベック優勝」。世界水泳代表の冨田尚弥がチームを引っ張り、史上2校目となる男女アベック優勝に挑む。
インカレは3日間、男女それぞれ全16種目が行なわれる。1位から16位までに得点が与えられ、その合計点を競う。
熱い戦いが幕を開けた。
「男子50m自由形」
この種目3連覇を狙った中京大の伊藤健太。しかし、先月のユニバーシアードで銅メダル、中央大の塩浦にわずかに及ばす2位。レース後、悔しさを滲ませた伊藤、その目は次のレースに向けられていた。
「男子200m背泳ぎ」
今年が最後のインカレ水泳となる中京大の白井裕樹。その前に常に立ちはだかってきたのが、世界水泳銀メダリストで同級生の入江陵介。
150mの最後のターン、入江に食らいつく白井。その差は体半分。しかしその差は縮まらず白井は2着。レース後、白井と入江はお互いの健闘をたたえ合い、がっちりと握手を交わした。
「男子100m平泳ぎ」
去年ライバル立石諒を退け、100mと200mの2冠に輝いた冨田が登場。レースは立石が引っ張る展開。最後まで立石を捉えきれず冨田はまさかの4位でフィニッシュ。
初日を終え、男子はトップ中央大と17点差の2位につけた。
「女子50m自由形」
初の優勝を目指す女子。トップバッターの雨宮未侑が世界水泳代表の日体大・松本弥生をタッチの差でかわして見事優勝。
「最初の決勝レースで、いい波を作りたかったので、優勝できたことは本当にうれしいです。男女アベック優勝しましょう!」
雨宮が作った流れが2日目の快進撃につながる。
200m自由形で小野口由夏が優勝。さらに、200m個人メドレーで末永京香が表彰台にのぼるなど、着実に得点を積み重ねていく。
女子は2日目を終え、2位の日体大に50点以上の差をつけ、トップ。初の総合優勝も現実味を帯びてきた。
一方、トップ中央大を追う男子の2日目。
100mバタフライ決勝で前田、杉岡、原の3選手が残り、得点を積み重ねるも、中央大との差を縮めることができない。そして、2日目最後のレースを迎える。
「男子400mメドレーリレー」
リレー種目は個人種目の2倍の得点。優勝すれば、トップ中央大との点差を一気に縮めることができる。白井、冨田、前田、伊藤の最強メンバーで臨んだ中京大、この種目連覇を果たす。
2日目を追え、トップの中央大との差は17点。最終日での逆転優勝へ望みをつなげた。
3日間の戦いも残すは1日。決戦前夜のミーティング。
小野口「絶対に男女総合優勝します」、冨田「今回の男女総合優勝は価値があると思うので、歴史に名を刻みたい」。男女アベック優勝へ。彼らに気負いはない。
迎えた最終日。頂点を決める最後の一日が始まった。
「男子100m自由形」
50mの雪辱に燃える伊藤が中央大の塩浦を抑えて優勝。しかも日本歴代2位の大記録。チームに勢いをつける。
「100mは何としてもチームのためにと思いまして、優勝できて本当にうれしいです。何とかうちが勝って(優勝して)天皇杯を中京に持って帰りましょう!」
100m背泳ぎ。白井は王者・入江をあと一歩まで追い詰めるが、惜しくも2位。続く200m平泳ぎ。冨田も全身全霊をかけた泳ぎを見せる。優勝こそ逃すも、最終種目を前に、総合得点で中央大を5点上回った。
「女子800mリレー」
女子、最後の種目。2位日体大との差を15点以上つけた中京大は、このリレーで6位以内に入れば、初の総合優勝が決まるなか、見事4位。日体大との激闘を制し、つかんだ初の頂点。中京大の応援スタンドは歓喜で沸き返る。
悲願の男女アベック優勝へ。残すは男子の800mリレーのみ。2位中央大との差はわずかに5点。このレースで全てが決まる。しかし、結果は中央大2位、中京大6位。最後に中央大に逆転を許した中京大。男女アベック優勝の夢は叶わなかった。
その日の夜の祝勝会。女子初の総合優勝を部員みんなで喜びあった。そして叶わなかった夢は後輩たちへと引き継がれた。
青春を捧げ、全力で駆け抜けたインカレ。悲願の「男女アベック優勝」に向け、中京大学水泳部の挑戦は続く。