放送内容

2012年04月07日(土)放送

中日ドラゴンズ 谷繁元信 ~密着!2000本安打へ 1/119~

カテゴリー:野球

目標・・・。そう問われると、男はいつも決まって口にする言葉がある。
「辞めるまで毎年優勝したい」
そう言い続けて、2年あまり。
41歳となった谷繁元信は、この言葉を現実のものにしてきた。
今シーズン、チームはリーグ3連覇を目指す。
そしてもう一つ、男には、大きな偉業を成し遂げるチャンスがある。
「そりゃ不可能な数字、今年一年で不可能な数字じゃないんで」
残り119本に迫っている2,000本安打。
だが個人の記録より、チームが勝つために全力を注ぐ。
プロ生活24年の歳月をかけ、新たな境地へ。谷繁元信のシーズンインに密着した。

バッターとして最高の名誉とされる2,000本安打。日本プロ野球史上、過去に達成した者は38人。
中でも扇の要と言われるキャッチャーではあの野村克也、そして古田敦也の2人しか達成していない。
去年12月、41歳の誕生日を迎えた谷繁はそんな大記録に口を開いた。
「(可能性は)ゼロじゃないとは思うので、ゼロじゃないですよ、正直ね」
プロ23年間での年間最多安打は、99年の126本が最高。119本は決して無理な数字ではない。

1月、今年のトレーニングは横浜からスタートした。
去年の日本シリーズからわずか2週間で自主トレを始めたという。
2月のキャンプでは、ただひたすら己と向き合い、練習に励んだ。
しかし優先されるのは、谷繁がキャッチャーであるということ。
それゆえ練習の合間をみてはブルペンに足を運び、ピッチャーの球を受けた。

同じキャッチャーでありながら2,000本安打を達成した元ヤクルトの古田敦也。
「一番はね、タフじゃないと出来ない。例えばキャッチャーやって守っている時って疲れるじゃないですか。
それでベンチに帰って一息つくじゃないですか。でも打席に行かないといけない。
すぐもうあの防具を全部とってすぐ打席に行く、その時にしっかり頭も整理して呼吸も整えてっていうと
意外にもうハアハアしてたり「疲れたなあ~」って思って集中力のないままの打席が年間に数十打席ははあると思いますよ」
通算1881本ものヒットを放ってきた谷繁だが、捕手としての偉業はこれほどにまで難しいのである。
それでもキャンプを終え、谷繁はオープン戦では9試合に出場して打率3割をマーク。ここ数年で最も良い数字を残した。

迎えた開幕当日。自宅からナゴヤドームへ向かう前、谷繁は取材に応じてくれた。
「今日開幕です。谷繁さんにとって24年目なんですが?」
「毎年毎年違う状態だし、精神的にも違うし、今現時点ではまだ何て言うんだろうな、
何かこうフラットな状態っていうか。でも今年に限れば、正直ちょっとヒジの状態がね。
オープン戦の最後の方良くなかったから、不安はちょっとはあって」
実は3月後半、谷繁は右ヒジの痛みに悩まされていた。
オープン戦最後の2試合に欠場し、ベンチで見守る・・・。結果を残していながら、ぶっつけ本番で開幕に臨もうとしていた。
「最初の一本っていうのは本当に出るまで、何て言うんだろうなあ・・・不安というか、
本当ヒット打てるかなっていう風な気持ちになるので、できれば今日一本ね、打てて。調子良く2本、3本と打てるように願って一打席目立ちます」

9年連続21度目の開幕スタメン、男のプロ24年目が幕を開けた。
注目の第一打席は2回、ツーアウト3塁1塁と先制のチャンスで回ってきた。
しかし・・・広島先発・前田健太は谷繁との勝負を避けた。ストレートのフォアボールで歩かされてしまう。
その後、第三打席まで一度もバットを振ることはなかった。結果は全てフォアボール。
そして第4打席は見逃し三振。チームは白星発進したが、快音を響かせることはできなかった。
さらに2戦目もノーヒット。固定されたスタメンの中でただ一人、谷繁だけにヒットが出ない。
だが連勝で迎えた3戦目、ついにその時が訪れる。
開幕から10打席目、レフト前へ待ちに待った今シーズン初ヒット。
119分の1。2,000本安打へ、谷繁元信の歩みはここから始まる――――