放送内容

2012年06月09日(土)放送

中日ドラゴンズ・山内壮馬投手 ~変貌~

カテゴリー:野球

開幕から2ヶ月。
交流戦に入り、巨人との熾烈な首位争いを繰り広げているドラゴンズ。
しかしチームは今、決して順風満帆の状態とはいえない。
特に12球団最強の投手陣に次々と異変が起きている。
2年ぶりに開幕投手を務めたエース吉見、また大リーグから復帰した川上など、先発ローテーションに入っていた男たちが離脱。
昨シーズンのセ・リーグMVP・浅尾も右肩を痛めた影響で、未だ復帰のメドが立っていない。
そんな苦しい台所事情の中で、投手陣を牽引しているのがプロ5年目・山内壮馬。
去年までのプロ4年間で、5つの勝ち星しか挙げられなかった男が、
開幕からわずか2カ月の間に早くも5勝(6月8日現在)をマーク。ローテーションを守り続けている。
期待されながら、結果を残せずにいた男が、何故今、勝てるのか?
何故、抑えられるようになったのか?

「与四死球」

昨シーズン、先発で57回3分の2を投げた山内が与えた四死球は合計22個。
対照的に今シーズンはここまで59イニングで四死球は11。実に去年の半分にまで減っている。
「フォアボールが減った、一番の半分になっているっていうのは
去年までいつも立ち上がりにフォアボールを出すことが結構あって、それが大分減っているので」
山内には、立ち上がりのフォアボールを無くすため、キャンプから取り組んできたある練習方法がある。
それがブルペンで打者を立たせてのピッチング。
バッターを常にイメージすることで、ゲームに入る感覚を磨き、そのまま立ち上がりを迎えることができるという。
それはシーズンに入った今でも、変わらない。
「試合前もいつも立ってもらって、だいたい一番バッターが左だったら左・右・左(の順番)で。
右だったら、右・左・右で投げてから行きます」
これにより、立ち上がりの不安が解消され、ピッチングのリズムが素早く掴めるようになった。
さらにもう一つ。今シーズン新たに意識して取り組んでいる練習が全ての基本であるキャッチボール。
山内は今、自らのピッチングフォームに3つのチェックポイントを設けている。
「真っ直ぐ立って、右ひざ(軸足)の意識をやって、リリースの瞬間の頭の位置」
キャッチボールで調子のバロメーターを計り、おかしな部分があると自らの力ですぐに修正を入れていく。

そして山内にはコントロールを追及してきたことで、思わぬ武器が備っていった。
今や彼の代名詞とも言える「動くボール」
元々、回転の綺麗なストレートを投げるタイプではなかった山内。
「動くボール」とは一体、どんな球なのだろうか?
通常、ストレートの握りは縫い目に沿って指を添える。
しかし山内の握りは、縫い目をずらし幅の狭くなった所を握る。すると、驚きの効果が現われるという。
「この握りだと、狙ったところに行くボールはちょっとカットで、
抜けたボール(右バッターのインコース)はシュートしていくんですよ。
だから上手く真ん中から避けるようにいくので」

今年の目標は2ケタ勝利と言い続けてきた山内。そこには、今年4月に新しく誕生した家族の存在がある。
自分のため、そして家族のため。男の躍進はまだまだ続く。
「この先に何があるか分からないし、多分ここから疲労とかも絶対にあると思うので、その中でどうやって今度は自分がやっていくかっていうのは
また違った意味で頭を使わないといけないと思うので、これからがひとつの勝負ですよね」
プロ5年目、様々な苦難を一つ一つ乗り越え、大きな変貌を遂げた山内壮馬。
まもなく、勝負の夏場がやって来る―――――――