放送内容

2012年06月16日(土)放送

ロンドン五輪日本代表 レスリング吉田沙保里

カテゴリー:野球

ロンドンオリンピック日本代表・レスリングの吉田沙保里。世界選手権9連覇、さらには オリンピック2大会連続の金メダルの、誰もが認める世界最強の女王。
最大の武器は「高速タックル」。一瞬の隙を見逃さず、確実にポイントを奪う。この神業で、次々と世界の強豪をしとめてきた。

しかし近年、吉田のタックルが世界から研究されてきている。
去年の世界選手権、決勝。タックルで強引に持っていこうとする吉田。しかし、勢いを止められ、場外際で返されてしまう。さらには、またもタックルを封じられると、逆にポイントを奪われてしまった。
「今までは相手と離れてタックルに入る、相手にあまり触れずに間合いをとってタックルに入っていたが、そのタックルがなかなか取れなくなってきた。くっ付いてくる選手や守りに徹される選手、飛び込んでも守られるという選手にはやっぱり、ひっついて崩したりとか、フェイントかけたりしながら、近くから入るというレスリングのスタイルもしていかないと、その弱点を直していかないと勝てない」
これまでの離れた距離からのタックルが通用しなくなってきた。近い距離からでも決めることが、世界と戦うために必要となっていた。
「自分の中では飛び込むスタイルから、飛び込まないで引っ付いてするレスリングのスタイルに変わっている。私は勝ちにこだわって、自分で色んなパターンの選手に対応できたらいいと思う」

「勝って当たり前」。
勝ち続けてきた者にしかわからない、負けられないプレッシャー。吉田本人はどう感じているのか。
「押しつぶされていたら勝てない。人間誰しもプレッシャーや負けたくない、勝ちたい、いろんな気持ちがあると思う。周りから「期待しています」「3連覇頑張ってくださいね」「金メダルとってくださいね」と言われることは、自分はすごくうれしい。プラスになる」

ロンドンオリンピック前の 最後の国際大会、女子レスリングワールドカップ。吉田にとって課題のタックルを試す、絶好の舞台となった。
吉田の2戦目、相手は中国の選手。再三タックルのチャンスを伺うが、警戒する相手選手に、思うように決めることができない。試合には勝利したものの、納得とは程遠い内容に、吉田はこう振り返る。
「なかなか入るタイミングを伺うだけで、なかなか飛び込めない。去年の世界選手権の時に勝っている状況で、タックルに入って返されていることがよみがえってきて、なかなか相手の懐に飛び込めなかった」

決勝の相手は、ロシアの19歳、世界的には無名な選手。守りに徹する相手に対し、一瞬の隙を見逃さなかった吉田。得意のタックルを決め、第1ピリオドをとった。
第2ピリオド。課題としていた近い距離から タックルをしかける。しかし、バランスを崩し、場外に押し出され、この大会で初めて ピリオドを奪われてしまった。
1対1で迎えた、第3ピリオド。ここが勝負と渾身のタックルに出たが、うまく相手にいなされ、場外際で返された。女王吉田、まさかの敗戦。大粒の涙が止まらなかった。
「思いっきりタックルに入れば入れたかもしれないけど、やっぱり入る前に自分を躊躇させるというか、返されるんじゃないかとか、色んな想いが頭の中を駆け巡るというか、入る前にブレーキをかけられる、見えないものがあって・・」

あの涙から1週間あまり。吉田は、気持ちを切り替え、次を見据えていた。
「負けたことは現実としてちゃんと受け止めて、今は五輪に向けて切り替えて頑張れている。
ワールドカップではなかなか近くから入れなかったし、スピードもなかったので、ロンドンでは、近くでも入れるように、飛び込んでも入れるように、いろいろ使いながら、これだけを決めてやるとかではなくて、自分の持っているもの全て出せればいいなと思う」
レスリング吉田沙保里。強さを増した女王が、ロンドンの舞台でオリンピック3連覇、そして最高の笑顔を見せてくれるだろう。