放送内容

2013年02月24日(日)放送

中日ドラゴンズ 山井大介 「日の丸から得たもの」

カテゴリー:野球

キャンプも終盤となった先週の金曜日。
沖縄で懸命に汗を流す選手がいた。
中日ドラゴンズ山井大介。

「プラスになったことですか。
少しの間でもああいうユニフォームを着られて
できたという事じゃないですかね。」

WBC日本代表候補として、初めて感じた日の丸の重み。
激動の2ヶ月に密着した。

年の瀬も押し迫った、去年12月30日。
山井はナゴヤ球場にある室内練習場にいた。
ひとり、黙々と遠投を繰り返す。
そして最後の1球。
投げたのはWBCの公式球だった。

「大変な2月3月になるんじゃないかと思っているし
覚悟はしているけど、WBCに選ばれたということは
名誉なことなのでうれしい事だし
今できることをしっかりやろうと思っている。」

プロ11年目となった去年、チーム最多タイとなる
56試合に登板。自己最高ともいえる結果を残した。
この活躍が認められ、山井はWBC日本代表、
侍ジャパンの一員に選ばれたのだ。

1月上旬、鳥取。
シーズンが始まる前のいつもの風景。
しかし今年は何かが違う。

「山本監督から電話があり、年賀状をいただき少しずつ
代表に選ばれたという実感は湧いてきましたけど。」

日の丸を背負ってプレーする日が
少しずつ、そして確実に近づいていた。

沖縄での自主トレ最終日。
ブルペンでの姿から伺える、順調な調整ぶり。
ところが本人には気になることがあった。

「不安はありますよね。
でも全員が全員同じボールを握っているので
言い訳できないし、早く慣れるしかない。」

滑りやすいというWBC公式球に不安を抱えながら
キャンプがスタートした。
第2クールに入るとすぐに実戦形式のマウンドへ。
ここで不安が的中する。ボールが滑り思うように操れない。
キャンプでもずっとWBCのボールで練習してきた。
表情は曇ったままだ。

日本代表合宿の合流前日。
練習後に一人でフォームを確認する。
常に最善を尽くす。悔いは残したくない。
そして出発の日がやってきた。

「やることはやってきて、ボールに慣れる慣れないというのは
ありますけどここまできたらできることをアピールして
あとは選んでもらえるか選んでもらえないかというのは
監督に任せるしかないので全力でアピールしたいと思います。」

覚悟はできた。
あとは力を出し切るだけだ。

日本代表合宿初日。
この日が山井にとっての日本代表デビュー。
ブルペンでは力のあるボールを投げ込み、
受けていた巨人・阿部からも声が出る。
まずまずのスタート。

「着心地はそうですね、今までにない緊張感と
雰囲気が味わえています。」

日の丸の重みを感じた1日だった。

いよいよ実戦がスタートした。
侍ジャパンの先発は柱として期待される楽天の田中将大。
しかし「ズレがあった」とコントロールが甘くなり
いきなり2失点。
もう一人のエース候補前田健太もボールが抜けるなど
WBC公式球への対応に苦しんでいた。
そして山井の出番。しかし・・・。
ボールが思うように操れない。
2イニングを投げて四死球は3つ。
不安は解消されていなかった。

翌日。すべてのピッチャーが練習を終えた後
山井は一人、ボールを投げ込んでいた。
不安を取り除くために、
前を向きながらいつものように全力を尽くした。

「やっぱり滑るというところから自分のフォームを
崩しかけていたので、5球投げたら4球ぐらいは
自分のフォームで投げられるようにしたいですね。
悪くはないんですけど、もう少し調整したいなと思います。」

この2日後、山井は日本代表チームから離れることになった。
候補に選ばれてから2ヶ月以上準備し、
日の丸をつけてプレーしたのは6日間。
それでも悔いはない。

キャンプイン直前、山井は日の丸をつけてプレーする
ことについて次のように話していた。

「かなり変わると思います。
それが何に変わるかは分からないですけど
少なからず自分の中で得るものはあると思いますし、
今後に生かせればなと思います。」

山井が得たものとは・・・。
1ヵ月後に始まるシーズンでの楽しみが
またひとつ増えたようだ。