華麗なテクニックで観客を魅了。その姿は『ピッチ上の妖精』と言われた。数々の記録、そして観客の記憶に刻まれた彼の名は、ドラガン・ストイコビッチ。
そんな彼が名古屋グランパスの監督に就任したのは2008年。低迷するチームの再建を託されたストイコビッチはすぐさま、その手腕を発揮。美しく、そして攻撃的なサッカーを根付かせ、監督就任からわずか3年でJ初制覇をもたらした。
しかし、就任6年目となる今シーズン。主力選手の怪我による離脱もあり、リーグ戦7試合勝ちなしで5連敗。チームは14位(13節終了時)とJ2降格圏内に低迷するなど、グランパスはかつてない苦境に立たされていた。そんな中で行われた、飛騨古川キャンプでは、より攻撃的なフォーメーションへの変更を行った。攻撃時にサイドバックが高いポジションを取り、前線により人数をかける4-4-2のシステム。攻撃的なスタイルを確立させ、リーグ再開後の上位浮上を目指した。
7月、ワールドカップ最終予選の為中断していたJリーグが再開し、ホームに清水を迎えた。試合は前半9分。ケネディのポストプレーから小川がゴールを奪い、グランパスが先制点する。その後同点とされるも、高い位置を取るサイドバックを基点に、何度も清水ゴールを脅かす。そして迎えた試合終了間際。小川が豪快にネットを揺らし、2対1。実に8試合ぶりに勝利を掴んだ。
そんな指揮官が見据えるビックマッチがこの夏行われる。
それは、『名古屋グランパスvsアーセナルFC』
イングランド・プレミアリーグの強豪、アーセナル。各国の代表クラスが名を連ねるビッククラブとグランパスが対戦する。アーセナルを指揮するのは、かつてグランパスを常勝軍団へと育て上げた、名将・アーセン・ベンゲル。
当時、最下位争いを繰り広げていたグランパスを再建。監督就任初年度に天皇杯初優勝を飾るなど、クラブ史上初のタイトルをもたらした。その年、ベンゲルは最優秀監督賞を受賞、そしてチームのエースだったストイコビッチは最優秀選手に選ばれた。
かつて師弟として、共にグランパスを再建した二人が、今度は互いに指揮官として、相まみえる。ストイコビッチ、そしてベンゲル。共に名将と呼ばれる二人の対決。
2013年7月22日、豊田スタジアムで新たな歴史の1ページが刻まれる―