「結果も出てないのに日本に帰るというのは正直イヤだった。情けないし、不甲斐ないし」
8月、古巣グランパスに復帰した永井謙佑。
驚異的なスピードで世界に衝撃を与え、掴んだ夢の海外移籍。
しかし結果を残せず、Jリーグに出場の機会を求めた。
「結局はサッカーしないと成長できないですし。だから勇気出して、いろんな人に相談して決めました」
2011年、11クラブによる争奪戦の末、名古屋グランパスに入団。
Jリーグデビューは、横浜Fマリノスとの開幕戦。永井のスゴさを、目の当たりにすることとなる。
ディフェンダーは永井のスピードに対応できず、ファールで止めるのがやっと。
元日本代表の中澤ですらも、簡単に置き去りにした。
50メートルは脅威の5秒8。その圧倒的なスピードで、試合の流れを変えるのが永井の魅力。
さらには抜群の得点感覚も兼ね備える。
そんな永井が世界の注目を集めたのが、去年のロンドンオリンピック。
そのスピードと得点力で、6試合で2ゴールを挙げた永井。世界にその名を轟かせた。
そして永井は、さらなる高みを目指す。ベルギーの強豪、スタンダール・リエージュに移籍。
持ち味であるスピードを武器に、ヨーロッパへと乗り込んだ。
しかし、スピードだけでは通用しない。感じた世界との差。
「フィジカルがすごいので、黒人ばっかりですし。普通にめっちゃ引っ張ってきたり、エグいタックルしてきたり。そういう体幹だったり、体の芯をしっかりさせないといけないのかなと思いました」
移籍1年目の出場はわずかに3試合。そして、ある決断を下す。
「ずっとやってなかったですし、結果も出てないのに日本に帰るというのは正直イヤだったし。
半年ですしね。まあ悩みましたね」
移籍してわずか半年。出場機会を求め、Jリーグ復帰を決めた。
「結局はサッカーしないと成長できないですし。もう1回一から頑張ろうかなと思って」
復帰戦はアウェー広島戦。男は試合に飢えていた。
これまでのうっ憤を晴らすかのように、永井はピッチの上で躍動する。
1点ビハインドの試合終了間際。
ゴール前、永井の粘りから同点ゴールが生まれる。復帰戦で存在感を示した。
その後も後半途中からの切り札として、全試合に出場している永井。ピッチを駆け回り、持ち前のスピードでウラに抜け出してチャンスを演出。自らも積極的に仕掛け、貪欲にゴールを狙う。
「永井は長い間公式戦でプレーしていないので、体力的にまだ万全ではない。彼には少しずつ試合に出ることで、コンディションを上げる時間が必要だ」(ストイコビッチ監督)
「チームに貢献できるように頑張りたいですね。いつも1点までが遠いので、早めに決めたいですね」
そして永井が復帰の決断を下したのには、もう一つの理由がある。
「2014ブラジルワールドカップ」
現在両親はブラジルに住んでおり、永井自身も3歳から8歳までブラジルで過ごしていた。
サッカーと出会い、始めた原点。そのピッチに立つため、試合に出て結果を残さなければならない。
「残りのワールドカップまでの期間は短いですけど、食い込んでいけるように頑張りたいです」
大きな決断の先に見据えるは、来年に迫ったワールドカップ。再び輝きを求め、永井は走り続ける。