9月25日。ナゴヤドームでは宿敵との
今シーズン最終戦が行われていた。
1点を追う3回、チャンスで5番、平田が
打席に入った。
高々と舞い上がった打球はレフトスタンドへの
10号逆転スリーラン。
141試合目で4年連続となる2ケタ本塁打に
ようやく到達した。
プロ9年目のシーズンを終えた今、
平田に芽生えた想い。
「チームだけに限らずプロ野球界で
一番凄いバッターになりたい
という気持ちは持っているので
土台をしっかりする事だと思います。」
土台を作り上げ頂点へ。
平田の挑戦が始まった。
逆襲を誓った今シーズン。
平田は開幕戦で4番を任されると、
いきなり2安打1打点の活躍。
絶好のスタートを切った。
しかし4月17日のDeNA戦。
平田は相手先発ピッチャー三嶋との対戦の中で
左手の指を骨折した。
それでも平田はケガを隠したまま試合に出続けた。
「今年4番で使ってもらって実力と成績では
4番バッターではなかったと思うんですけど
でもやっぱり監督が期待して使ってもらっている以上は
体が動く限り出続けたいと思っていたので・・・。」
4番の責任を果たし、期待に応えたいという思いが
平田を突き動かしていた。
しかし・・・。
いつの間にか平田らしい豪快なバッティングは消えていた。
「手の指を骨折してそこからちょっと狂いだして
それを修正できなかったというのが
今年1年の悔やむところというか・・。」
ケガの影響で狂いだしたという
バッティングフォーム。試行錯誤の連続。
だが左手の違和感がシーズン終盤まで続いた事もあり
自分の形を取り戻すことはできなかった。
そんな中でもプロ9年目の今シーズン、
初めてレギュラーの証しともいえる
規定打席に到達した。
そして、感じたことがある。
「初めて規定打席にいって、
改めて野球の難しさというのを
覚えたシーズンです。」
『野球の難しさ』
「基本となることをしていても
それがいい結果に結びつく事もあれば、
いい結果に結びつかない時もあるし・・・。」
「フォームをいじっていじってじゃなくて
1年間通してそのフォームのベースというのが一緒で
1年間通したいと思っています。
土台をしっかりするということです。」
いま平田は改めて感じた野球の難しさと
真正面から向き合っている。
秋季練習ではしっかりした土台、
変わらないフォームを目指して、
懸命にバットを振り込んでいる。
新しい出会いもあった。土井正博特別コーチは
通算465本ものホームランを放っている強打者。
西武のコーチ時代にはあの清原やおかわりこと中村を
指導したこともある名伯楽。
いま平田に付きっ切りでアドバイスを送っている。
同じ方向を目指しながら・・・。
「平田君には平田モデルをつくろうじゃないかと。
1年間コロコロ変えるんじゃなくて
自分のフォームはこれなんだ。
子供が真似をするんだというようなところまで
レベルアップしようと話しました。」
目指すのは途中で変わらない土台。
自分だけのバッティングフォーム。
この秋の練習では、軽く振って遠くに飛ばす。
新たな打ち方にも取り組んでいる。
いま、平田のバットから放たれた打球は
大きな放物線を描いて飛んでいく。
遠くへ、より遠くへと。
「土台をしっかりするゴール地点というか、
目指すべき位置というのはイメージはできています。」
「チームだけに限らず、プロ野球界で一番凄いバッターに
なりたいという気持ちは持っているので」
中日ドラゴンズ平田良介。土台から頂点へ。
その歩みを止めるつもりはない。