今年の春
フィギュアの名門
中京大学に進学した、大庭雅。
「授業も学びたいことが学べるし、
友達もたくさんできたので
すごく楽しいです。単位も全部取れたので(笑)」
2年連続でジュニアグランプリのメダルを手にした
ニッポン次世代のエース候補は、
今シーズン、シニアに本格参戦。
来月には、
グランプリシリーズデビューを果たす。
「グランプリシリーズがずっと夢だったので、
それに出れるって事が決まったことが一番の驚きでした」
持ち味は、抜群の身体能力から繰り出すジャンプ。
海外のトップ選手でも難しい
連続ジャンプをマスターしただけでなく、
なんと、超大技「トリプルアクセル」も跳ぶことができる。
そのきっかけを作ったのは、
最近では、世界でただ一人成功させている
高校・大学の先輩。
「いつも浅田真央選手とも一緒に
練習させていただいていたので
もともとアクセルジャンプは得意だったので
見ていてなんか私でも出来るのかなと言う風に思えて」
さらに、
短い助走で、
しかも軸のぶれないフォームで跳べる。
その礎を築いたのが、
スケートを始める前に習っていた器械体操だった。
「体操をやっている頃から回転練習とかしていたので
軸のとり方で活かされているのかなと思います」
しかし、8月末。
得意のジャンプで転倒し、頭を強打。
脳裏に焼きついた恐怖が彼女を苦しめる。
「どのジャンプも跳べなくなって、
初めてこんなにも調子が悪くなりました」
1ヶ月後、
シーズン初戦の中部フィギュアを
浮かない表情のまま迎えた。
当日の練習も、
難度を落とした構成ですらミスが相次ぐ。
「こういうの初めてで
みんなの始まったの見て本当に大丈夫かなってずっと不安で
試合前もずっと泣いていて・・・」
そんな中迎えた本番。
冒頭のジャンプ。
3回転3回転の連続ジャンプを着氷!!
その後も、軸のぶれない綺麗なジャンプを決めていく。
「余裕があるジャンプが本当にないので
もうこの1本がこの1本がという気持ちで跳んでいました」
さらに、
ジャンプの調子が悪い分
練習に比重を置いてきたというステップやスピンでは
人生で初めて全て最高評価のレベル4を獲得。
気づけば、自己ベストを更新していた。
(演技後、涙する大庭)
「終わった後の涙も今まで経験したことがなかったので、
本当に自分の中で嬉しかったなと思います」
フリーでも、
一本一本跳ぶごとに本来の輝きを取り戻していく大庭。
終盤の3連続ジャンプも完璧に成功し
思わず笑みもこぼれる。
初優勝を飾り、
復活の兆しを見せた。
「なかなか優勝というものをあまりしたことがないので
すごくうれしいです。
調子が悪い中でこれだけまとめれて
しっかりやれるだけのことはやれたので
ほっとしました」
あれから1週間。
大庭は、1ヵ月後に迫るグランプリシリーズデビューを見越して
練習していた。
トリプルアクセルも視野に、
ジャンプの難度を徐々に上げようとしている。
「まだまだそんなに〝できます!″っていうくらい
(ジャンプの)調子がいいわけじゃないので
グランプリでは/前のようにキレのあるジャンプが出来るように
がんばりたいと思っています」
中部フィギュアには、
ジュニアでも
特別なシーズンを送る選手たちが出場していた。
名古屋の中学に通う14歳、
横井ゆは菜。
数々のスケーターを世に送り出す
長久保裕コーチに鍛えられたジャンプスキル。
さらに、所属クラブの先輩、
鈴木明子さんから学んだ表現力を兼ね備え、
今シーズン日本代表に初めて選ばれた。
そのデビュー戦、
メーテレ杯ジュニアグランプリでは
思わぬハプニングの連続。
試合前には、
長久保コーチを外国人と間違え・・・
演技直前には、壁に衝突。
「本当はしゃいでたって感じなのでウキウキしていて」
横井はその気持ちの高ぶりを演技に生かす。
持ち前の表現力を武器に、
世界の6位入賞を果たした!
しかし、
最大の得点源、
3回転の連続ジャンプが単発になったことを悔やんでいた。
「ああいう大会で完璧な演技をするには
練習からノーミスでしてかなきゃいけないんだって思いました」
次は、悔いの残らない演技を・・・
中部フィギュアを前に、
横井はミスをしたジャンプを重点的に練習していた。
「ジュニアグランプリでできなかったところをちゃんと克服して
(中部フィギュアでは)1位になりたいなって思います」
横井とともに
急成長を遂げているのが、
中学3年の永田絵美莉。
「すごい私ジャパンジャージが着たくて
(横井選手の姿を)先に見ていると
着ているなってずるいなって感じでした(笑)」
横井に続く日の丸デビューを
虎視眈々と狙っていた永田。
シーズン初戦、
なんと、3回転3回転の後に2回転をつける
3連続ジャンプを完璧に成功し
見事優勝を飾った。
そんな国内で結果を出す永田のもとに
ジュニアグランプリ出場の知らせが舞い込んだ。
その大事なデビュー戦の1週間前に開かれる
中部フィギュアは、
今の実力を試せる舞台。
「すっごいうれしくて、
でも初海外なので絶対に緊張するだろうなと思うんですけど
中部フィギュアでは緊張もなるべくしないようにしたり
全てノーミスでやっていきたいです」
それぞれの目標を胸に挑んだ
中部フィギュア。
永田のフリー、
冒頭はシーズン初戦で成功した3連続ジャンプ。
1つ目の着地でバランスを崩し
単発に終わる。
それでも、続くジャンプを3連続にしてカバーすると、
その後も、切れのある技を披露していく。
全てのスピンで最高評価のレベル4を獲得した永田。
代表デビューを前に課題と手ごたえを掴んだ。
「これだけしっかり緊張感を味わってきたので
もう次は大丈夫かなと思います」
初優勝を目指す横井。
冒頭は、練習を積み重ねてきた3回転の連続ジャンプ。
なんとか着氷する。
「練習できたから出来るって思ってやったらできました」
その後も、7つの3回転ジャンプを盛り込んだ
難しい構成をミス無く演じていく。
さらに、調子を落としていたトリプルループも完璧に成功!
そして・・・
世界に評価された持ち前の表現力を見せる。
演技後、思わずガッツポーズが飛び出した横井。
自己ベストを更新し、大会初優勝を飾った。
「3-3を入れての初優勝だったのでうれしいです
もっと課題を見つけて練習して次につなげたいです」
横井は今シーズンの目標、
全日本選手権出場に向け
さらなる進化を図っている。
一方の永田は、
代表デビュー戦で世界の7位入賞を果たした。
悔しさの先にある眩い光。
その輝きに照らされながら
地元スケーターたちは世界に羽ばたいていく。