アメリカ、ソルトレークシティー。
13年前にオリンピックが開かれたこの地で、
特別なシーズンをスタートさせるスケーターがいた。
中京大中京高校3年、宇野昌磨。
昨シーズン、
4回転トゥループとトリプルアクセルをマスターし、
一気にブレイク!
羽生結弦以来となる
ジュニアの世界2大タイトルを独占しただけでなく、
歴代最高得点をも塗り替えた!!
「(2つの大技を)身についていなかったらもう一年も何年も
ジュニアをやっていたと思うんですけど、
すごいいい一年で終われて思い残すことがないので
今年からシニアで頑張っていきます」
満を持してシニアに参戦。
グランプリシリーズデビュー戦は、
いまだ演技をしたことがないアメリカが舞台。
1ヵ月後の試合を見据え、
同じアメリカでシーズン初戦を迎えた。
心がけるのは、原点回帰。
「今年はシニアで一番下なんで
勝たなきゃいけないってそういう気持ちがない中で戦えると思うので
去年よりは楽しく試合ができるかなと思っているので」
「楽しむ」ことから始まったスケート人生。
ところが昨シーズンは、
ジュニアを引っ張る立場がゆえの重圧が
常にのしかかっていた。
「責任というかやらなきゃいけないって気持ちもあったので」
そのプレッシャーから解き放れた今、
まさに初心に立ち返る絶好の機会。
「宇野昌磨選手、集中しています。
ちょっと軸が乱れています(笑)」
格上の選手を追えることが、今は楽しい。
だからこそ、
難題を乗り越えなければならない。
「去年は4回転だから失敗しても
ほかのジャンプを頑張ればいいと思っていたんですけど
シニアなので本当に跳ばなきゃいけないと思っています、今は。」
これまで武器にしてきた大技は、
シニアにとって、もはやスタンダード。
何本も成功させるのが必要不可欠。
宇野は、
大技をそれぞれショートで1本ずつ、
フリーでは2本ずつに増やした。
実は昨シーズンに一度、
シニアを見据えた構成で演じたことがあった。
しかし、
ミスを連発。
難しさを肌で感じていた。
「本当にシニアの選手はこれを毎回毎回やっているんだなって
すごい実感しました」
それだけではない。
レベルが上がったプログラムを、
フリーでは、
ジュニアより30秒も長く滑り続けなければならない。
大会前日、
フルで曲をかける練習では・・・
疲れ果てる姿
全ての力を使い果たしていた。
迎えたシニア1年目の初戦。
宇野を待ち受けていたのは、
まさかの展開だった。
ショートプログラム。
冒頭、調子が良かった4回転トゥループ。
シニアとなり
ショートにも組む込んだが
3回転で転倒。
得点が加算される後半に持ってきた
トリプルアクセルも2回転になってしまう。
結局、全てのジャンプでミスした宇野。
シニアシーズン、初めての演技は、
ジュニアでも経験したことがない
最悪の結果となってしまった。
「けっこう落ち込んでいますけど・・・
ちょっと縮こまってたのかなというのもあって、
もっと思い切りいけばよかったって今思っていますね。
ショートで残った不安を打ち消せるようなフリーになりたいと思っていますし
取り返せるように少しでも頑張りたいと思います」
失意の中迎えた、翌日のフリー。
ショートでミスし不安を抱えながらも、
シニアで戦える難しい構成で臨んだ。
「今までの練習いっぱいしてきたので、
体に身を任せてあとは気合って」
冒頭は、4回転トゥループを
完璧に成功させると・・・
続く4回転からの連続ジャンプも
きれいに決める。
ショートで失敗したトリプルアクセルも成功。
大技を3本続けて決める。
ショートで思い切り滑れず後悔した宇野。
攻めの姿勢を貫いていく。
「攻めなければいい演技ができないって実感しました」
後半、
2本目のトリプルアクセルは、
疲れがピークに達した足で必死に堪える。
全ての大技を決め、
今までより30秒長いシニアのプログラムを
なんとか演じきった。
フリーではトップの得点をマーク、
シニアでも通用する実力を見せ付けた。
「なんとかショート跳べなかった4回転も2本決めることができ、
アクセルも悪くはなかったかって感じですけど、
まだまだ伸びシロがあるフリープログラムだなと思います。
なによりフリーの体力がこれからの一番の課題かなと
もっともっと難しいジャンプを入れていく中で
体力面でももっと余裕がないといけないかなと思います」
実は大会前日の練習、
試合で誰も成功させたことがない
4回転ループを決めていた。
「試合でお見せできるほど跳べてないですけど可能性はあるかなって」
無限の可能性を秘める17歳。
シニアの戦いはまだ始まったばかり。