去年の夏、豪速球で甲子園を沸かせた小笠原。チームを全国優勝に導き、その名を全国にとどろかせた。
鳴り物入りでドラゴンズに入団した大物ルーキーには、大きな期待が注がれた。
2月の沖縄キャンプでは、初ブルペンで143キロを計測。80人を超える報道陣をくぎ付けに。
終盤には実戦登板も果たし、高卒ルーキーながら1軍キャンプを完走。
開幕へ向け、順調に階段を上り始めた小笠原だったが、すぐにプロの厳しさを味わうことになる。
本拠地デビューとなった、ヤクルトとのオープン戦。
バレンティンに浴びた強烈な一発が、小笠原に大きな衝撃を与えたという。
「まっすぐで行ってもあそこまで飛ばされたのはすごく印象に残ったので・・・だったらもっと磨いてやろうって気持ちが芽生えました」
ストレートの質に加え、スタミナ不足が課題となった小笠原は、開幕2軍スタート。
先発に必要な体力つけるため、自身のピッチングを基礎から見直した。
取り組んだのは、下半身を中心としたトレーニング。
持ち味のストレートをより生かすため、「下半身から連動して上に力を伝える」フォームを固めていった。
5月、そんな小笠原にチャンスが訪れる。先発投手が相次いで離脱する中、一軍に合流。
デビュー戦の相手は、ソフトバンク。
立ち上がり、この日最速・147キロをマーク。2回まで得点を与えない。
ところが3回、2番・今宮にチェンジアップをとらえられ、初めての失点。
5回には制球が定まらず、3連続フォアボール。ノーアウト満塁の大ピンチで、ふたたび今宮との勝負。
キャッチャーの桂はこのとき、バッターを打ち取るためのある決断をしていた。
「インサイドで勝負」
また小笠原は桂のサインに、こう感じたという。
「インコースまっすぐいけばなにか起こる」
インコースに構えた桂のミットへ、渾身のストレート。
大ピンチを、ダブルプレーでしのいだ。
窮地を救ったのは、最大の武器・ストレート。
5回1失点。初勝利こそならなかったが、確かな手応えをつかんだデビュー戦となった。
「もっと腕をふれるようになって、長いイニングを投げられるようなピッチャーになりたい」
追い求める、理想のストレートへ。18歳の挑戦は、まだ始まったばかりだ。