歴代2位の高得点で
世界選手権の銀メダリストに輝いた、中京大学の宇野昌磨(19)。
今シーズン10試合、すべて表彰台!
いまや、世界が注目する五輪の金メダル候補にまで成長した。
そんな大躍進のカギを紐解く!!
【ジャンプ高難度時代】
「一瞬でも立ち止まっていたら置いていかれるような世界だなって」
まさに、空前絶後のフィギュア界。
4回転ジャンプが急増し、もはや入れるのはスタンダード。
種類、本数をいかに増やし、失敗しないかが勝負を分ける。
宇野もまた、荒波を突き進むトップスケーター。
実はシーズン前、今の風潮を予感していた。
「誰かが跳んだらみんな跳ぶだろうと思っていますし
4回転でも周りを見ていると
あの人が跳んだからやってみようやっぱりできたって感じが多いので
どんどん種類が増えるかなと思うので」
宇野は世界で初めて成功させた4回転フリップをほぼすべて着氷!!
今年から組み込んだループも含め、4回転は3種類に増えた。
現在ショート・フリー合わせて6本。いまや3回転の本数に匹敵する。
それでも、一瞬でも立ち止まってはいられない。
「周りの選手を見るとまだまだ自分の跳べた種類では
物足りないなって実感があるので」
そこまで彼を突き動かす原動力、それが・・・
【生粋の負けず嫌い】
「負けず嫌いなところもあるので、やはり誰にも負けたくない」
それは、たとえ世界のトップに対しても・・・
「Q羽生選手にどういうところで勝ちたい?
どういうところというかすべて勝ちたいです」
背中を追い続ける3歳年上の羽生結弦は欠かせない存在。
「ゆづくん(羽生選手)との距離が自分がどれだけ成長しているかの
物差しと言っても過言ではないぐらいの最終目標」
以前は〝戦える立場ではない″語っていた格上と、
今シーズン、3度対戦。
総合成績では敗れたものの、ショート・フリーどちらかは上回る。
さらに、4回転の跳べる種類、本数ともに追いついた。
「おととし、去年に比べたら近づいていると思うんですけど
ノーミスした時にどっちが勝つかわからない選手に
なれるよう来年までに頑張りたい」
実は、最も負けたくない存在は他にいた。
【大人の階段を駆け上がる】
宇野が掲げる今年の抱負・・・〝昨日の自分に勝つ!″
「一番は自分に負けたくないって思っているので
常に成長し続けたい」
小さい頃から注目を集めてきた地元期待のスケーターも、
今年で20歳。
彼を表す形容詞も〝かわいい″からいつしか
〝かっこいい″に変わっていった。
成長は、食生活でも垣間見える。
こよなく愛するのは、肉と白米。
それでも栄養面を気遣い、苦手な野菜も口にするようになった。
「嫌いな野菜がいっぱい入っていて美味しいです」
さらに、大きく成長したのが練習に取り組む姿勢。
「ただ闇雲にやるだけではいけないとか、
今の自分がやらなきゃいけないことを考えて
自分で実行するようになったなって思います」
12月、フランスで開かれたグランプリファイナル。
2位とわずかの差で前の年と同じ銅メダルに終わった。
水を分けたのは〝連続ジャンプ″
フリーでは3度入れられるものの、
1つコンビネーションにできず。
その後、連続ジャンプにすれば良かったが、補えなかった。
「同じ過ちを繰り返さない!」
帰国後どのジャンプも連続で跳べるよう
重点的に練習する姿があった。
ファイナルから2週間後の全日本選手権。
練習の成果を発揮し、初の日本一に涙がこぼれた。
「練習は嘘をつかない、絶対に無駄にならないっていうのが確認できて
すごくうれしかったです」
成長は得点にも表れていた。
軒並み昨シーズンの自己ベストを上回るハイスコア!
下支えする要因こそ、宇野がもっともこだわるもの。
【魅せる表現者】
「自分はすごく表現が好きなんだなって」
ジャンプが取りざたされる中、
安定して高得点を出しているのが〝演技構成点″。
もとよりこだわり続ける表現力が評価されている。
シーズン中にもアイスショーに出演、
観客の視線を浴びながら感性を研ぎ澄ませてきた。
2月のアジア大会。
同い年で脅威の4回転ジャンパー
中国・金博洋を追うフリー。
ジャンプで2つの転倒が響き、技術点を伸ばせずにいた。
それでも、表現が好きな彼を救ったのが、演技構成点。
ライバルに差をつけ、実に日本男子14年ぶりの金メダルを手にした。
「フィギュアスケートはジャンプだけじゃないので
表現・スピン・つなぎを、もっともっと磨いていきたいなと思います」
【スケートこそ人生のすべて】
「もっともっとスケートを楽しむ時間が欲しい」
「週一でオフを取るようにはしているんですけど
やることがないんですよねスケート以外に(笑)
スケートが無かったらこんなに暇なんだって実感しましたし、
結局滑りに来たんですけど」
最も欲しいのは、超絶に快感を味わえるあの時間。
「もっと試合があっても良いなって思っています。
やり直しが効かない一度しかチャンスがないというあの緊張感は
今しか味わえないことですし、
努力してその成果が実って手に入れたものだからこそ
スポーツは楽しいって思うので」
これまで異例ともいえる10試合に出場し、さすがにお疲れ。
でも、楽しみはまだまだ続く!!
2週間後のシーズン最終戦、世界国別対抗戦に出場。
「チームメイトが見守る中で滑るという
また違った空気の中でやれると思うんですけど」
世界上位6か国によるフィギュア最強国決定戦。
男女シングル、ペア、アイスダンスの総合力で争われる。
オリンピックの正式種目で来年のピョンチャンを見据えた戦い。
宇野は背中を追う羽生と手を組み、ニッポン3大会ぶりの優勝を狙う!
「最後笑顔で滑って笑顔で終われたらよいですが
チーム戦であるのでみなさんに貢献できるよう最善を尽くします」