スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦しつづけるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。
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2008/04/05放送
3月28日、開幕の朝。ナゴヤドームへ向かう荒木雅博は意外なほど落ち着いていた。「もっと開幕だという特別な感じがありましたけど、ちょっと今年は違いますね」今年はプロ13年目。自身が節目と考える30歳でのシーズンとなる。
「とにかく1試合1試合新しい気持ちで、良い事があっても悪いことがあっても切り替えというものをしっかりやっていけるように、それをテーマにやっていきたいと思います。」
そして迎えた開幕戦。荒木は3回に今シーズン初ヒットを放つと守備でも好プレーを連発。攻守に軽快な動きを見せ、順調なスタートをきった。そんな中、試合は2対2のまま延長戦へ。そして延長10回、ノーアウト満塁という絶好のサヨナラのチャンスで荒木に打席がまわってくる。ところが荒木は初球を打ってサードゴロ、ダブルプレー。結局この回、得点を奪うことができず最悪の結果となった。しかし…「変に細工してダブルプレーだったら立ち直れないけど、思い切って打った結果だからしょうがない」そんな中、12回にもツーアウト3塁とまたもサヨナラのチャンスで打席に入る荒木。またも初球を打ちセカンドライナー。そのまま試合は引き分けに終わった。2打席連続で初球を打ち凡退した荒木。チャンスで初球を打って凡退したバッターは、次の打席で消極的になることが多い。しかし荒木は初球を打った。そこには去年までとは違う荒木の姿があった。「去年までの僕なら打ちにいってないでしょうね。今年は最初から大胆にいこうかなという気持ちもあるし、30歳になって違った感覚で野球をやれているし自分が狙って打ってダメならしょうがない。そういう割り切りもしっかりとできればいいかなと思う。」
今年のテーマ「気持ちの切り替え」が、できたからこその初球打ち。結果は残せなかったが積極的にバットを振ることができた。翌日の第2戦。荒木はチャンスで迎えた3回の打席で今シーズン初タイムリーを放った。打ったのはまたも初球。開幕戦の借りをしっかりと返した。
今月2日。荒木はFAの権利を得た。プロ13年目、30歳。まさに節目となるシーズンはまだ始まったばかりである。