アスリートドキュメント

スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦し続けるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。

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トヨタ自動車ヴェルブリッツ 遠藤幸佑(ラグビー日本代表)

2008/12/20放送

冬を代表するスポーツ「ピッチ上の格闘技」ラグビー。現在日本では、国内最高の社会人リーグ「トップリーグ」が後半戦の真っ只中。大学ラグビー界は大学選手権が12月20日から、高校ラグビー界は「花園」で有名な全国高校ラグビー大会が12月27日から開幕し、冬の風物詩がにわかに活気に溢れている。

地元愛知にはトップリーグで活動するトヨタ自動車ヴェルブリッツがある。過去には全国社会人大会優勝5回、日本選手権優勝3回を誇り名実ともに「名門」としてこれまで君臨してきたチームなのだが…10月末までの前半戦6試合を2勝4敗の10位で折り返す大苦戦!!優勝候補といわれた「名門」がかつてない苦しみを味わったのだ。

そんな中、リーグ戦前半を終えたばかりのチームに「ある男」が帰ってきた。男の名は遠藤幸佑(えんどう こうすけ)。北海道出身の6年目、28歳になる選手だ。遠藤のポジションはトライを奪う上で大事なバックスの一角、ウイングとフルバックを担う。186センチ、92キロと恵まれた体格から生み出す爆発的なパワーが持ち味で法政大学からトヨタ自動車に入社してまもなく、レギュラーに定着すると日本代表にも選出され現在代表キャップ(出場試合数のこと)23を誇るジャパンのエースである。

遠藤の名を世界へと轟かせたのが、去年フランスで行われた「ラグビーワールドカップ」。ジャパンは3敗1分けで予選敗退したが、後に「今大会で最も美しいトライ」と賞賛されたウエールズ戦でのトライを決めるなど、大活躍!!この活躍がきっかけで遠藤はラグビーの本場ニュージーランドのチームからオファーを受けたのだ。今年7月から4ヶ月間の武者修行を経験した遠藤。カンタベリー州のチームに合流し、ニュージーランド国内選手権に出場。日本人として史上3人目のプレーヤーとなった。

「ボールに対する自分の動き、ラグビーへの考え方が変わりました」
「積極的に仕掛けることの大切さが向こうで学んできたことです」
と帰国後に語ってくれた遠藤。10月末に武者修行を終えてからチームに一度は合流した遠藤だったが、トップリーグは1ヶ月間の中断中。ラグビー界の11月は世界的に国際マッチを行うことと位置づけられていて、ジャパンもアメリカとのテストマッチが2試合組まれていた。もちろんそのメンバーに遠藤の名も刻まれていた。

「見ていて自分も楽しめるラグビーがしたい」そう言って、アメリカとの一戦に臨んだ遠藤。凱旋試合となった一戦で後半5分に逆転トライを決め、9年ぶりにアメリカ代表を下した。その後トップリーグが再開し、遠藤はトップリーグ復帰戦でトライを決めたが、惜しくも敗戦。来年2月の日本選手権に出場できる6位以内(14チーム中)の確保に黄信号がともったが、ここからトヨタの連勝が始まる。現在4勝5敗、7位まで順位をあげてきた。(12月19日現在)
かすかな望みだった日本選手権出場が、ハッキリとまた見えてきた。

トヨタ自動車ヴェルブリッツ・遠藤幸佑、28歳。ラガーマンとして成熟の時を迎えようとしている。彼にこの先の目標を聞いてみた。「もう一度世界に行ってみたいです」名門復活へのキーマン。男の果てしない挑戦は、この先も続く。


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