スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦し続けるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。
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2009/05/30放送
5月19日。交流戦初戦となった埼玉・大宮でのゲーム。
2005年にスタートした交流戦も今年で5年目を迎えたのだが、中日は過去4年間、一度も交流戦の開幕ゲームに勝利した事がなかった。
だが今年、去年日本一に輝いた埼玉西武を終盤に捕まえ、5年目で交流戦の開幕戦に初勝利。
その試合で劇的な勝ち越し2ランを放った男・・・
和田一浩、36歳。埼玉西武からFA移籍で中日にやってきた男の2年目は打撃フォーム改造という部分から今年はスタートした。
和田自身、移籍してきた去年は打率3割2厘、本塁打16、打点74という成績を残すも、本人曰く「とにかく悔しかった、チームの勝利に貢献できなかった事が全て」とバッサリ。
さらに「若い頃のように、バットが振れなくなりつつある。打撃を見直してシンプルなフォームに変えようと思った」と長年培ってきた打撃フォームを一から作り直す経緯を話してくれた。
過去、埼玉西武時代には首位打者や最多安打、ベストナインなど数々のタイトルを獲得してきた
男にとって大きな決断だったに違いない。それでも本人は「不安はない。これで打てなかったら引退という文字も見えてくる。必死にやる」と決意を持って臨んでいたのだった―――
和田のこれまでの打撃フォームは極端なオープンスタンスから足を高く上げ、腰を使って、強くスイングするのが特徴だった。主な改造のポイントはオープンスタンスをやめて、左足をややスクエアスタンス(足を開かない)にする事。こうする事によって、打ちに行くまでの動作を大幅に無くし、バットをスムーズに出せるのだという。
「ボールを芯でとらえるには結構邪魔な動きというか、今まで無理のある打ち方をしていたので。
そういう意味でシンプルしたいっていうのが一番の理由ですね」と改造のポイントを明かしてくれた。
そしてシーズンが開幕。和田は4月の月間打率こそ3割以上をキープしていたのだが、長いペナントレースを戦う上で好調を維持し続ける事は極めて困難なこと。
まして今年、打撃フォーム改造を行い現在でも試行錯誤を繰り返している和田にとっては試練の時が続いている。打率は5月に入ると落ち始め、現在は2割8分。(5月29日現在)
それでも、交流戦に入ると開幕ゲームの埼玉西武戦での決勝2ランを皮切りに、25日の北海道日本ハム戦では決勝タイムリー、さらに28日の東北楽天戦でも延長10回にサヨナラホームランを放つなど、着実に打撃フォーム改造の成果は現れ始めている。
「一年でも長く活躍したいっていう気持ちがあるので、毎年成長したいと思う気持ちは変わらない」と語った和田一浩。チームは今、リーグ3位。勝率5割のラインを行ったり来たりを繰り返しているが、この男のバットが全開になった時、チームは浮上へのキッカケを必ずつかむに違いない。
進化した和田の逆襲は始まっている―――