アスリートドキュメント

スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦し続けるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。

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中日ドラゴンズ 荒木雅博

2009/08/15放送

~役割~

交流戦明けからチームは驚異的な追い上げをみせ、首位ジャイアンツと熾烈な優勝争いを繰り広げている。
そんな中、今シーズンチームでただ一人フルイニング出場を続けているのが荒木雅博である。
「自分が決めなくてもその前に役割をしっかり果たしておけば」
荒木が目指す『役割』とは・・・。

7月10日のカープ戦。試合は緊迫した投手戦となり0対0のまま延長へ。
10回裏、先頭の荒木が出塁。すると止まっていた試合の流れが一気に動き出した。
相手バッテリーが警戒する中、荒木がスタート。
見事に盗塁に成功しチャンスを広げ、プレッシャーをかける。
そしてこの後、4番ブランコがサヨナラスリーラン。
勝負を決めたのは4番の一振りだったが、固く閉ざされていた得点への扉を開いたのは紛れもなく荒木だった。

「流れが変わるかどうかは分からないけど、ただノーアウト1塁よりノーアウト2塁の方が点になる確率がグンと上がるし、そういうのはずっと目指していますから」
しかし勝負に直結する重要な場面では、当然マークも厳しくなりスタートは難しくなる。だが・・・。
「僕にそれがなかったらチームにいる価値がないです。走ってくれというときに走れないとね。そういう気持ちでやっていますから」

自らの存在をかけて。荒木は覚悟にも似た強い気持ちを持って盗塁を仕掛けているのだ。
もちろん結果を出すための準備は怠っていない。
内野ゴロが3塁方向に飛ぶとセカンドは送球がそれたときに備えファーストのベースカバーに走る。
1試合で10回以上になることも珍しくないこの動きの中で、荒木は全力でダッシュを繰り返す。
そうすることで足を鍛え、脚力が落ちない工夫をしているのだ。

7月1日。荒木はひとつの節目を迎えた。
史上40人目、チームでは3人目となる通算250盗塁達成。プロ14年目でつかんだ大きな勲章。
この後、荒木が決勝点のホームを踏んだのはいうまでもない。
「打ってランナーを還してヒーローになるというのも良いかもしれないけど、その前に自分がランナーに出て・・・。別に目立たないところで勝利に貢献できるのも良いなと。自分が決めなくてもその前に役割をしっかり果たしておけば・・・。」
目指すのは自分がヒーローになることではなくチームの勝利。
大事なのはそのための『役割』をこなせているか、どうか。今、その手応えはある。
「ここで走ってくれというようなところで走れているのが良いと思います。」
交流戦が明けてから荒木が決めた盗塁は15個。そのうち12個が得点に結びついている。
8月15日現在の盗塁数はリーグトップタイの28。2年ぶりの盗塁王のタイトルも視界に捉えた。

それでも・・・。
「数を増やそうというより、とにかくいい場面で走りたいというのが強いですね。」
チームを勝利に導く突破口となる。自らの役割を果たすために文字通り突っ走る荒木。
優勝争いを繰り広げるチームにとって、これほど頼もしい存在はない。


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