スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦し続けるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。
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2009/10/17放送
2年前の日本シリーズ。第5戦に先発としてマウンドに上がった
中日ドラゴンズ山井大介は伸びのあるストレートと切れ味鋭いスライダーを武器に
日本ハム打線を8回まで一人のランナーも許さないパーフェクトに抑え、
その潜在能力の高さを見せ付けた。
この試合に勝ったチームは53年ぶりに日本一に輝き、
山井自身も大きな手応えをつかんだシーズンとなった。
ところが去年は右肘を痛めるなど故障の影響で登板はわずかに2試合。
山井は常に付きまとう故障の影に苦しんでいた。
そんな中で山井は大きな決断を下した。
「こういうトレーニングが自分に合っているかなと思う事があるので
そこに行ってみようかなと・・・」
新年が明けたばかりの今年1月初旬。
山井はひとり、鳥取にあるトレーニングジム『ワールドウィング』で自主トレをスタートした。
ここはチームメイトの山本昌、岩瀬がオフに必ず訪れ自主トレを行う場所である。
故障に強い二人が行っているトレーニングを山井も取り入れることにしたのだ。
故障の影を振り払うために下した決断は、吉と出た。
「痛みがなくなって自分の身体の動きも良くなってというものを感じられたので行ってよかった」
故障の苦しみから解放された山井。今シーズン2度目の先発となった4月の巨人戦では
7回を投げて打たれたヒットはわずかに1本、9奪三振の内容。順調なスタートきったように見えた。
ところが、その後の登板ではボールを全く操ることが出来ず制球に苦しみ散々な結果に。
「いけるかなと思いながら投げていたんですけど、ストライクが入らないようなピッチングをしてしまった。
というかそういう風にしか投げられなかった。痛くないフォームを探して出来たフォームが
バッターと勝負できないフォームになっていたのかなと・・・。」
『バッターと勝負できないフォーム』つまり戦う以前の段階。結局2軍での再調整を余儀なくされた。
それでも去年とは明らかに状況が違っていた。故障の影響、つまり投げられないという理由でのファーム落ちではなく、
パフォーマンス不足。ファームではきっちり投げ込みを重ね『勝負の出来るフォーム』を作り直すことが出来た。
1軍に復帰を果たしたのは8月終盤。登録されたばかりの試合で山井は1イニングを抑え4年ぶりのセーブを記録した。
今シーズンの成績は0勝4敗2セーブ。数字だけ見れば満足できるものではない。
それでも1年間投げ続けられた事で、確実につかんだものがある。
「何かまた見つけられたかな。バッターと勝負できるような状態です。」
チームは日本一を勝ち取るためクライマックスシーリーズという新たな戦いに突入した。もちろん山井も乗り遅れるつもりはない。
「シーズン中、何も出来なかった分何とか自分の持っているものを出して勝ちたい。
手応えはあります。やってみないとわからないですけど、でもそういう気持ちは持ってマウンドに上がります。」