スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦し続けるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。
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2009/11/7放送
名城大学女子駅伝部。全国から集まった29人の精鋭たち。彼女たちが挑むのは全日本大学駅伝だ。名城大学は4年前の2005年、創部わずか11年で全国制覇を果たした。順風満帆に見えたが、その後は期待されながらも優勝には届かず、去年も3位に終わり悔し涙を流した。
―あれから1年。悔しさは後輩達に受け継がれ、厳しい練習に耐え抜いてきた。朝の練習は6時から毎日10キロ。午後には授業を終えた選手達に厳しい練習が待っている。1日平均30キロ、1年間休むことなく走り続ける。これも全日本で日本一になるため。
そんなチームのエースは4年生の西川生夏。1年生から駅伝メンバーに入り、チームの柱として期待を背負った。西川は、今年の7月に行われた、ユニバーシアード1万メートルに出場。しかし、ライバル校の3年生、西原に完敗。その後、エースにのしかかった重圧は想像以上に大きかった。
そんなエースを救ったのは、同じ4年生でキャプテン兼マネージャーの高橋輝実だ。 高橋は高校時代、九州を代表する長距離ランナーだった。大きな期待を背負い、大分から名城大に入学したが、彼女に待っていたのはケガとの戦いだった。自信を失い、輝きを失くしたランナー。かつての栄光を捨て、一度は実家に戻る決意も固めた。そんな彼女を救ったのは、母の言葉だった。「逃げたらダメ。辞める事は逃げる事だから」
選手ではなく、マネージャーとしての道を選んだ高橋は、4年生に上がるとキャプテンに立候補。それは、エース西川に対するある思いがあったからだ。「生夏は真面目すぎるから、周りの事ばかりを気にかけて、自分のことを後回しにしてしまう。自分がキャプテンになれば、エースへの負担がなくなるんじゃないか」と。
大会前日の決起集会。メンバーに控え選手からプレゼントが贈られた。「信」という文字の入った手作りのお守りだった。そして部員29人の心が一つになった。 その夜、キャプテン高橋はエース西川の部屋を訪ねた。エースの口から、「いつも頼りなくてごめんね。最後ぐらいはちゃんと走るから」と親友を前に、今まで溜めていたものが一気に溢れでた。
いよいよ決戦当日。1区を走る津崎がまさかの失速。2区を走る西川は7位で襷を受け継いだ。序盤から快調なペースの西川。最初の1キロで3人を抜いて4位で襷を渡した。その後、3区の野村は1人を抜き、名城大は3位へと順位を上げ、続く4区の下藤、5区の須谷が想いを繋げる。みんなの思いが詰まった襷を身に付け、懸命に走るアンカーの井原。しかし、願いは届かず名城大は今年も3位に終わった。
そして、レースを終えたキャプテンとエース。 お互い4年分の想いを語った。 そして、2人は抱き合い、固い握手をして涙を流した。