スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦し続けるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します。
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2010/2/6放送
「自分で自己分析して、じゃあ今何をすべきかを自分で考えてくれないと、やらされているうちはプロ野球選手とはいえない」
2月1日、12球団が一斉に各地でキャンプインした。
各球団の指揮官ほとんどが今年のテーマをキャンプ初日に語る。
「絶対にリーグ制覇する」や「優勝するためのキャンプ」など目標をあえて口にして士気を高めるのがほとんどだ。
だが中日ドラゴンズ・落合博満は違った。監督が打ち出した方針は「自主性」である。
「(練習を)やりたい者はやればいい、帰りたい者は帰ればいい」
ドラゴンズといえば、落合が就任してからキャンプでは練習に次ぐ練習が当たり前。
しかし今年はこの地獄のキャンプから一転、放任するという。そんな就任7年目のキャンプが幕を開けた。
今シーズンのセントラルリーグ開幕は例年よりも1週間早い3月26日。
いつもならキャンプ初日から数えて「2ヶ月もある」と思えるが、今年は「2ヶ月しかない」が妥当な表現である。
この事に真っ先に反応していたのは、落合監督だった。
マスコミは昨年末から04年の監督就任以来となるキャンプ初日紅白戦?など、オレ流キャンプになるのではと予想していた。
しかし結果は違った。が、キャンプ初日に10人のピッチャーがブルペンに入り、
フリーバッティングにもそれ以外のピッチャーを登板させて投手陣の状態をチェックした。
「2ヶ月しかない」事実を落合監督はその時点で試したかったのだろう。それだけピッチャーは早い仕上がりが求められている。
一方の野手。このキャンプ最大の注目は荒木・井端のコンバートだ。「彼らの今後の野球人生を考えてそうしたほうがいい」と
去年から指揮官は断言していたこのコンバート。去年こそ井端の体調不良によるキャンプ離脱、荒木の開幕前の左肩故障があった。
「完成できなかったらじゃあ元に戻すのかという選択肢はこちら側にはありません。(コンバートが)出来なければ別の選手を使います。
それくらいの覚悟でやってもらわないと」
落合は退路を断った。出来なければレギュラー剥奪という状況に荒木、井端は今置かれている。
「不安ですよ、でもその不安を楽しむようにやるのがこのキャンプのテーマです」(荒木談)
「セカンドがうまくいかなかったらポジションがなくなる。ショート以上にやらないといけない」(井端談)
荒木は連日のように特守を受けている。井端はコーチ指導を受けながらダブルプレーの入り方を入念に話し、時にはノックを受けている。
それぞれのやり方は違えど、彼らは今、本気である。
「今更改めることもないでしょう。違いますか?そのためにやっていますから」
「そのため」とは4年ぶりのリーグ制覇を指す。それをあえて報道陣の前で目標を口にしなかった指揮官。
オレ流らしいといえばらしい。しかし言葉の一つ一つが今年への執念のようなものが感じられた。
自主性を重んじた今年のキャンプで選手たちはどう成長するのか。今年のドラゴンズは何だか面白そうだ。