アスリートドキュメント/スポーツの素晴らしさは夢に向かって挑戦しつづけるアスリートの素晴らしさ。密着取材でアスリートの真実の姿を描き出します

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中日ドラゴンズ 山井大介

2007/09/08放送

~取り戻したもの~

現在、熾烈な優勝争いを繰り広げるドラゴンズの中で大きな戦力となっている男がいる。プロ6年目を迎えた山井大介。しかしいまから半年前、山井は右肩を痛めピッチングすらできない状態だった。「この状態が続いたらもう野球は終わるのかな」まさに選手生命の危機。だが山井は見事復活を果たした。その復活劇に隠された真実とは…

3年前の日本シリーズ。山井は決め球スライダーを武器に西武打線を抑え込み、シリーズ初登板ながら勝ち星を挙げた。落合監督も「満点じゃないですか、あのピッチングは。」と最大級の賛辞を贈る好投。大舞台で結果を出したプロ3年目の右腕に大きな期待をよせた。ところが翌年は3勝止まりと期待にこたえられない。そんな中去年、山井を悪夢が襲う。ピッチャーにとって致命的とも言える肩の痛み。山井は治療に専念した。しかし、今年に入っても肩の痛みが治まらない。それどころか原因すら分からない日々が続いた。「治療して炎症部分と言うのはまったく無いんですよ。ただ投げると痛い…」完治しているはずの右肩だが投げると痛みが走る。肩の痛まないフォームを求めて試行錯誤の日々。

そんな時、エース川上が手を差し伸べた。肩の位置がわからないという山井に対して「そこじゃないだろ。入団したばかりの時は下半身がもっと移動してお尻がもっと入っていたぞ。」川上は肩のことばかり気にする山井に下半身の動きの重要性を指摘した。すると…「教えてもらってその通りに投げていたら痛くなくなったんですよ」違いにしてわずか数センチ。下半身の動きを意識したことにより自然と腕が振れ、あんなに苦しんでいた肩の痛みは消えた。あとは入団した当時のフォームを取り戻すだけだった。そして7月6日、ナゴヤドーム。山井はおよそ1年10ヶ月ぶりに1軍のマウンドに帰ってきた。投げられることの喜びを目いっぱい感じながら…。そして今、すでに3勝を挙げ完全に復活を果たした。

そんな中で、山井の気持ちに変化がおきた。「1年目の初勝利のヒーローインタビューで楽しかったですと言った言葉を忘れかけていた。いま、そういう気持ちです。」フォームを取り戻し、選手生命の危機を乗り越え、今また野球を楽しむという気持ちも取り戻した。すべてを取り戻した山井大介の復活劇は、まだ始まったばかりだ。