研究コーナー/スポーツにまつわる伝説や言い伝え、些細な疑問までを徹底検証します。

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アスリートの必殺技

2007/05/26放送

トリプルアクセル

近年、日本中を熱狂させるフィギュアスケート。中でも最も国民の注目を集めているのが、16歳の浅田真央。
いまや国民的スターとなった彼女の必殺技がトリプルアクセル。前足踏切で3回転半するトリプルアクセルは現在のフィギュアスケートでは最も何度の高いジャンプのひとつである。
ではなぜそれほど何度が高いのか。名古屋大学・池上教授に聞いた。
「トリプルアクセルっていっても空中で完全に3,5回転するのではない。踏み切りの時にある程度体が回転している。そして着氷してからも体が回転する。だから着氷した後は残りの回転をするっていうことと、もう1つは着地の際の衝撃を吸収する、それから体がどうしても軸が傾いているのでそのバランスを回復しないといけない。その3つの動作を着地の瞬間にしなければいけない」
このように難度の高いジャンプ、トリプルアクセル。選ばれたアスリートだけに許された美しき必殺技なのだ。

火の玉ストレート

阪神タイガース、藤川球児。バッター全員がボールの下を振ってしまうほど藤川のストレートは異様な伸びをみせる。
分かっていても打つことはできない、その速球はいつしか火の玉ストレートと呼ばれ始めた…!
実際にボール受ける矢野捕手は藤川のボールをこう評する。
「オレらの時代はやっぱりそういう江川さんのストレートが本当にホップするボールとかっていうモノの代表やったけど。球児のボールは間違いなくそれに匹敵するし、もしかしたら超えてるかも知れへん」
火の玉ストレート、それは誰にもまねができない最強のストレートである。

高速タックル

前人未到の公式戦109連勝を更新中の女子レスリング吉田沙保里。彼女の必殺技は高速タックル。全ては一瞬で決まる。

相手は、タックルがくるとわかっていても、交わすことができない、では実際に吉田のタックルは何がすごいのか。超高感度ハイスピードカメラでタックルを撮影し、中京大学・湯浅教授に分析を依頼した。

「吉田選手のすごさは反応時間。脳から筋肉に命令がいって体を動かす。この時間が短いほど高速タックルになるのだが吉田選手の場合はこの反応時間が極めて速い。吉田選手がパッと前に行く反応速度、時間を求めたところ0.16秒。私たちがこれまでいろんなスポーツ選手の反応時間を調べてきたなかで、かつて一番速かったのが柔道の谷亮子選手で0.17秒。これが今までの最高記録だったが、吉田選手はそれを上回る0.16秒という反応で動き始めている。これはきっと人間の限界のほぼそのあたりだと考えていい。おそらくこれ以上早く反応するというのは不可能とはいわないけれど相当難しい。」

吉田沙保里の高速タックル。それは超人的な反応速度があればこそ可能になった驚異的な必殺技である。