トライアスロンは、ほぼオフシーズン。本調子ではない時期で、しかも直前の合宿で足を傷めていた彼は、そのレースを調整と位置づけていた。
レース前に調子を聞くと、「いや、足はちょっと…。まあ、調整やから、適当っていうか、そこそこで…」と、関西弁で笑って答えた。スタート前もいたってマイペース。競技説明会が始まっても、ゆるゆると別の場所でレース準備。他の選手が、すでにバイクをトランジッション・エリアにセッティング完了しても、一人だけバイクセッティングを終えておらず、放送で呼び出される始末。レース直前も張り詰める空気はどこ吹く風で、一人軽くアップをこなし、スタート2秒程前に人ごみをかき分け、最前列に辿り着くほど。それくらい、暢気な空気だった。
けれども、レースが始まってしまえば、結局はトップ集団。最終ランでも、トップ争い。周回レースで最終ラップの競り合いこそ譲り2位とはなったものの、ゴール後も息を切らすことなく、悠然とダウンのラン、バイクに行ってしまった。