「金つなぎ」。ひび割れた茶碗は二度と戻らない。しかし、金を使ってひびを埋めつなぐ事で器はあらたな輝きを放ちます。そんな金継ぎの技に思いを託した会があります。
「金つなぎの会」…全国に1600人あまりの会員(海外の会員も含む)を持つ <がん患者の自助努力の会>です。自らをひび割れた茶碗になぞらえ、それを繕う金を仲間や家族、医療などに託したものです。
設立されて今年で10年。20人ほどでスタートした会は、これまでに多くの仲間たちががんに倒れ、そして新しい仲間が次々と加わってきました。がん患者の会そのものはけして珍しい組織ではありませんが、この会は代表の広野光子さん(64)の強いリーダーシップにより、がん患者同士がみずから運営し、HPによるネットワークを作り上げ活動する団体です。いつも笑顔を絶やさず前向きに生きることをモットーにした会は、今年10年目を記念して、熊野に大花火を打ち上げました。亡くなって行った仲間たちへの鎮魂と生きていくものへの安寧を祈って神々が棲むという熊野の海に捧げた花火です。
がん患者、しかも今も抗がん治療と戦っていることさえ気づかせない元気さの裏にのぞかせる孤独で絶望的な体験を私たちは知ることになります。
がんを体験したからこそ知る<生きることと死ぬことの意味><希望こそが癌と戦うエネルギーのすべてであること><仲間と家族と支えあい闘う病であること>。いまやがんで亡くなる人々は全体の3分の1になってしまったほど珍しい病ではありませんし、すべてが絶望的な病気であることもなくなってきました。しかし、がんを宣告されれば否が応でも「死」と向き合う苦しさと戦わなければならないのは事実です。少しでも多くのがん患者たちに生きる勇気と夢と希望を与えられる番組にできればと思っています。 |