メ~テレでは、2004年から原子爆弾の残留放射線の問題に取り組んでいる。今回の番組は、ドキュメンタリーとして6作品目になる。
追い続けているのは、愛知県知多市に住む被爆者の甲斐昭さん(83歳)だ。
甲斐さんは、1945年8月6日、原爆投下直後の広島市に救援活動などのために駆けつけ被爆した。
原爆の放射線は、爆発から1分以内の初期放射線とそのあとの残留放射線に分けられている。
甲斐さんは残留放射線の被爆者だ。
国は、一昨年まで、残留放射線による原爆症を認めてこなかった。
甲斐さんは集団訴訟の原告1号として、基準の改正を求めてきた。
被爆者側の勝訴が続き、審査方針を改め、国は甲斐さんの原爆症を認定したが、法廷では「甲斐昭はほとんど被曝していない」と放射線の影響を否定し続けた。
訴訟は、60年の時を経て、残留放射線の影響にスポットライトを当てた。
アメリカの科学者とともに、広島の放射線を調査研究してきた広島大学の名誉教授・葉佐井博巳さんは、放射性降下物による影響、内部被曝の問題が未解明だと証言する。
実は、原爆を投下したアメリカにも核実験による残留放射線の被爆者がいる。
アメリカ政府は、特定のがんに限り補償をしているが、病気と放射線の因果関係を認めたわけではない。
しかし実際には、世界初の核実験で、すでに放射性降下物の影響を知っていたのだ。
番組は、日米の科学者の証言や、公文書などから、残留放射線の影響を否定のからくりを追う。
日米関係に詳しい名古屋大学の名誉教授・春名幹男さんは、アメリカがその人道的なイメージを維持するため、残留放射線の問題が隠されたと話す。
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