愛知県半田市のセンターワンホテル半田は、2005年10月に発覚した姉歯秀次元1級建築士による耐震強度偽装事件に巻き込まれ、2006年に解体された。
社長の中川さんは、建築確認審査で偽装を見過ごした愛知県の責任を問い、損害賠償を請求する裁判を起こした。
愛知県は、阪神淡路大震災で危険が指摘された構造を、審査で原則、認めないというという指針を震災の2年後に通達している。
ホテルの審査が行われたのは2001年だ。
にもかかわらず、県は自らの指針に反して、危険な構造を見逃していた。
名古屋地裁は2009年に、行政の責任を認める判決を下したが、去年10月、名古屋高裁は判決を変更し、愛知県の過失を否定した。
当時の建築基準法の下では、審査の対象外だったという県の主張を全面的に認めた形だ。
一方、ホテルは再建されて2007年に再スタートを切ったが、不況で経営難に陥っている。
中川さんは自宅を解体し敷地を売りに出してまでも裁判を維持してきた。「県民の安心安全を守るのが行政の役目」と社長は信じている。
高裁の判決に失意の日々を送りながらも、最高裁に上告し、なおも行政の不作為と闘おうとする姿を追いかけた。
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