2017年3月5日放送
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第581回放送番組審議会(2月14日開催)では、メ~テレ開局55周年記念番組『英樹&彬のなるほど鍋奉行』(1月22日全国ネット放送)について審議しました。
放送人権委員会は、NHKの『NHKスペシャル』「調査報告 STAP細胞 不正の深層」(2014年7月27日放送)に対し、2月10日、委員会決定を通知・公表し、「勧告」として名誉毀損の人権侵害が認められると判断しました。
この放送について申立人の小保方晴子氏は、「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などと訴え、NHKは、「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論しました。
委員会決定では、STAP研究に関する事実関係をめぐっては見解の対立があるが、これについて委員会が立ち入った判断を行うことはできない。委員会の判断対象は、本件放送による人権侵害及びこれらに係る放送倫理上の問題の有無であり、検討対象となる事実関係も、これらの判断に必要な範囲のものに限定される。
本件放送は、STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高いこと、また、そのES細胞は若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実等を摘示するものとなっている。これについては真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められる。
こうした判断に至った主な原因は、本件放送には場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮を欠いたという編集上の問題があったことである。そのような編集の結果、一般視聴者に対して、単なるES細胞混入疑惑の指摘を超えて、元留学生作製の細胞を申立人が何らかの不正行為により入手し、これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘した、と受け取られる内容となってしまっている。
申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送によるプライバシー侵害の主張については、科学報道番組としての品位を欠く表現方法であったとは言えるが、メールの内容があいさつや論文作成上の一般的な助言に関するものにすぎず、秘匿性は高くないことなどから、プライバシーの侵害に当たるとか、放送倫理上問題があったとまでは言えない。
本件放送が放送される直前に行われたホテルのロビーでの取材については、取材を拒否する申立人を追跡し、エスカレーターの乗り口と降り口とから挟み撃ちにするようにしたなどの行為には放送倫理上の問題があった。
本件放送の問題点の背景には、STAP研究の公表以来、若き女性研究者として注目されたのが申立人であり、不正疑惑の浮上後も、申立人が世間の注目を集めていたという点に引きずられ、科学的な真実の追求にとどまらず、申立人を不正の犯人として追及するというような姿勢があったのではないか。委員会は、NHKに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告しました。この決定には、補足意見と、2つの少数意見が付記されました。
第112回放送倫理検証委員会(2月10日開催)では、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について報告書の提出を求めた上で討議し、審議入りすることを決めました。
対象となったのは、TOKYO MXが2017年1月2日、『ニュース女子』で放送した沖縄の基地建設反対運動についての特集です。この中で、「マスコミが報道しない真実」と題して沖縄の高江ヘリパッドの建設反対運動などを取り上げ、現地リポートとスタジオトークで放送した直後から「沖縄に対する誤解や偏見をあおる」「番組が報じた事実関係が間違っている」など多数の意見がBPOに寄せられたものです。
審議入りの理由について川端和治委員長は、「どれだけきちんとした裏付け取材が行われたかが問題になる。ただ、持ち込み番組ということなので、放送局の考査の段階で、考査がきちんとできたのか、できなかったのかを、まずチェックしないといけない」と述べました。委員会は今後、TOKYO MXの関係者からヒアリングを行うなどして審議を進めます。詳しくはBPOのホームページをご覧ください。
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