ふるさと納税”10月ショック”がやってくる 一部ルール変更で返礼品は値上げや減量、狙い目は体験型?

2023年9月11日 19:02

総務省が10月からふるさと納税のルールを一部変更します。この影響で、返礼品の寄付額が上がったり、量が減ったりするなどの動きが、一部の自治体で出始めています。この「ふるさと納税”10月ショック”」を取材しました。

ふるさと納税が変わる?

 愛知県豊橋市では、ふるさと納税の返礼品として市の消防本部の職員による火災警報器の設置・交換と火災予防についてのアドバイスを取り入れています。

 設置が義務付けられている住宅用火災警報器。

 1万5千円以上の寄付で、豊橋市内の住宅が対象となります。
 
 市外に住む娘がふるさと納税に申し込み、新たな火災警報器を設置された女性は「心配してくれる娘がいることは心強い」と話します。

 「市外に住む家族が豊橋市内に住む親御さんなどに火災から命を守ってもらうために住宅用火災警報器を、安心を送るという意味で使用してもらえればと思います」(豊橋市消防本部 予防課 稲垣博之さん)

 

羽島市の返礼品:コストコの年会費が無料になるク―ポン

ふるさと納税返礼品に「コストコ効果」?

 各自治体が知恵を絞る、ふるさと納税の返礼品。

 岐阜県羽島市では、名物のだんごや米、地元の木工作家がつくるボールペンなどを取りそろえています。

 中でも特に人気なのが、会員制の大型スーパー「コストコ」。

 羽島店の年会費が無料になるク―ポンをふるさと納税頻の返礼品に加えたところ、予想以上の反響があり、「初めて申し込んだ」という声も寄せられたそうです。

 「『待っていました』という声もメールでももらっています。今年度は、約1.5倍から2倍の寄付額を見込んでいます」(羽島市総務部管財課 奥田奈緒子 用度係長 )

 コストコ効果などで、2023年度の羽島市への寄付総額は過去最高になる見通しだといいます。

 「羽島市の場合は新幹線やインターがあって通過点になりやすいんですけど、今後はふるさと納税を通じて、市内でグルメや観光を楽しんでもらえるようなものになったらいいなと思っています」(羽島市総務部管財課 奥田奈緒子 用度係長 )

 

総務省調べ

利用は年々増加、22年度は過去最高額を更新

 どれぐらいの人が「ふるさと納税」を利用しているのか? 街の声を聞いてみました。

 「年末に北海道のイクラを」という人や「普段使うものを選んだ」と熊本から米・北海道からコーヒーを頼んだという人がいれば、「何を選んでいいか、どこを選んでいいか。ネットでやるのが面倒くさい」と利用したことがない人もいました。

 ふるさと納税の利用は年々増加していて、22年度の寄付額は9654億円と1兆円に迫る勢いです。

 前の年から約1.2倍で、過去最高額を更新しました。

 

返礼品に注力する名古屋市

課題は「市税の流出」

 その一方で、ふるさと納税は、納税者が自分の住んでいない自治体に寄付をする制度。

 名古屋市の「流出額」は、横浜市に次いで2位となっています。

 「名古屋市は市税の流出が全国2位の159億と多くなっているので、課題と思っています。この制度は人口の多い都市部で税の流出が増えるということで、単純に市税の収入が減になります。それだけ収入が少ない中で財政運営をしていかないといけないことになります」(名古屋市財政局 丸井康嗣 資金課長)

 名古屋市は流出対策として、2021年から返礼品に力を入れていて、22年度の受入額は63億2300万円と、全国14位の多さでした。

 「大変たくさんの寄付をいただいていますので、大変ありがたいと思っているし、今後も続けて市内の事業者の支援につながるよう取り組んでいきたいと思っています」(名古屋市財政局 丸井康嗣 資金課長)

 

総務省が10月からルール改定

総務省が10月からルール改定で影響も、対応に追われる自治体

 一方、ふるさと納税をめぐっては、総務省による10月からのルール改定で影響が。

 一つ目は「熟成肉と精米」。

 「熟成肉」はこれまで、海外などから取り寄せた肉を熟成させて返礼品に使うことが可能でしたが、10月からは、その自治体がある都道府県内で生産された肉しか認められなくなります。

 また、お米についても、県外で収穫した玄米を精米して返礼品とすることは認めないとしています。

 このルール改定により、自治体も対応に追われています。

 愛知県碧南市では、特産品のニンジンや白だしなど約1000件の返礼品を取り扱っていますが、地元の工場で精米した県外産のお米は10月から取り扱いを中止することになりました。

 

尾鷲市の返礼品:国産うなぎを押し寿司風にした「うなぎおこわ」

 そしてもう一つは、「経費ルールの厳格化」です。

 漁業が盛んな三重県尾鷲市。

 「ぶりの切り落とし」など海産物の返礼品が人気で、2022年度は県内で7番目の寄付額を集めていました。

 水産品加工会社の「鷲洋」は、国産うなぎを押し寿司風にした「うなぎおこわ」が名物商品です。

 これまで1万5000円で尾鷲市の返礼品として出品していましたが、10月のルール改定を前に2万5000円に変更しました。

 「頑張って我慢していたんですけど、今年になってからまた値上げになってやむを得ずこちらの商品も値上げさせてもらいました」(鷲洋 総務・経理課長 小川美香穂課長)

 返礼品については、寄付を受けた後にかかる手続きなどの経費も含めて寄付額の5割以下とするよう厳格化されます。

 材料費の高騰も重なり、値上げせざるを得ない状況だといいます。

 「値上げの理由としてうなぎ自体が1番が大きいですね。注文がきたら説明はしています。全部がいま値上がっていますね」(鷲洋 総務・経理課長 小川美香穂課長)

 

仲介サイト「ふるさとチョイス」でも「10月1日から値上げ」の記載

返礼品の仲介サイトにも「10月1日から値上げ」の文字

 ルールの改定により、返礼品の仲介サイトにも影響が出ています。

 全国1788の自治体の返礼品を掲載している仲介サイト「ふるさとチョイス」には、「10月1日から値上げ」と書かれている自治体もあります。

 影響が大きいのが、「経費ルールの見直し」です。

 「特に北海道や九州など首都圏や都市圏から離れているエリアだと、もともと送料も割とかかってくる地域になりますので、そういったところは特に影響も大きいのかなと思っています」(トラストバンク 広報 永田理絵さん)

 この影響により、10月以降、返礼品の値上げや内容量を減らす自治体が多くなる見通しだといいます。

 一方で、注目が高まっているのが「体験型」の返礼品です。

 「体験型のお礼の品というのが最近よく出ていまして、そこのところは送料の影響をほとんど受けない。電子化してしまえばチケットとかも送る必要がないので」(トラストバンク 広報 永田理絵さん)

 宿泊券やガイド付きツアーなど体験型の返礼品は、実際に現地に行って、お土産を買うなどするため経済効果も大きいといいます。

 「特産品がそれほどない自治体でも、観光というところで人を惹きつけることができますので、これからもさらに注目が高まっていくのかなと思っています」(トラストバンク 広報 永田理絵さん)

(9月11日15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)

 

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