被災地のトイレ問題 水を使わなくていい「トイレカー」開発 用を足した後に熱でフィルムを圧着

2024年3月7日 14:16

東日本大震災からまもなく13年です。「トイレが使えない」当時、課題となった被災地のトイレ問題。1月に起きた能登半島地震でも同じような問題が起きています。

数々の問題を解決できるかもしれないトイレ

 元日に発生した能登半島地震。5日時点で、いまだ5000人以上が避難所生活を送っています。復興への道のりは長く険しいものになっています。

 名古屋のNPO法人「レスキューストックヤード」は20年以上前から被災地で支援活動を行っています。

 代表の栗田さんは、東日本大震災から対策が進んでいない、ある課題に頭を悩ませているといいます。

 「トイレ問題は非常に大きな課題。東日本大震災から指摘されています」(レスキューストックヤード 代表理事 栗田暢之さん)

 東日本大震災の時、避難所で問題となった施設を聞いたアンケートによると、一番多かったのがトイレでした。

 能登半島地震でも一時、4万軒を超える世帯で断水となり、トイレ問題は今なお続く大きな課題となっています。

 「どうやって表現したらいいか、もう全部が丸見え。何て言うかやりたい放題。出るものはしょうがないので、出たものの上に汚物がたまっていくという状態。流せないのでそのままの状態になっている」(栗田さん)

 

トイレの課題1つ目は「トイレのくみ取り問題」

能登半島地震で見えてきたトイレの課題は3つ

 能登半島地震で見えてきたトイレの課題は、3つあったといいます。

 1つ目は「トイレのくみ取り問題」

 「避難所にあるトイレカー。階段が外されていて、朝の混雑時間が終わったあと使用できなくなっています」(記者)

 避難所には、簡易トイレやトイレカーが数多く設置されました。

 珠洲市のこちらの避難所では、トイレカーが朝の混雑時のあと、今も一時的に使えなくなっています。

 タンクが便や尿でいっぱいになり、くみ取りが間に合わないためです。

 

トイレの課題2つ目は「携帯トイレの使い方に慣れていない」

携帯トイレに慣れていない…

 2つ目は「携帯トイレの使い方に慣れていない」という問題。

 家庭で携帯トイレを備蓄したり、支援物資として供給されたりして携帯トイレを使う機会が多くなりました。

 しかし、被災地では使い方がわからない、という人を多く見かけました。

 七尾市の能登島に住む小幡さん。携帯トイレを使うのは初めてで、娘が手順を紙に書いてくれました。

 「掃除もしなきゃいけないし、感染症も怖いので、清潔のためにもいるなと思いました」(能登島に住む 小幡委都子さん)

 

下水管の復旧支援を行う名古屋市の職員

下水管復旧の遅れ

 そして、3つ目の課題は「下水管復旧の遅れ」です。

 名古屋市の上下水道局の職員は、珠洲市で下水管の復旧の支援を行っています。

 全長104kmにわたる下水管の調査を行っていて、そのうち本格的な調査を必要とする箇所は98kmもあり、復旧工事に入るめどは立っていません。

 下水管が復旧しなければ、トイレの水を流すことができず、被災地では家庭のトイレが使えるようになるまで、まだ時間がかかりそうです。

 

水を使わなくていいワンボックスカーの中にあるトイレ

問題を解決できるかもしれない“トイレ”

 そんな数々の問題を解決できるかもしれないトイレが珠洲市で使われていました。
 
 「非常に快適です。5歳の子どもも上手に使っています。においもないし、水も使わなくて便利だと思います」(利用者)

 ワンボックスカーの中にトイレ。しかも、水を使わなくていいというのです。
 
 このトイレカーを作ったのが、岐阜県可児市にある「トイファクトリー」という会社です。

 「我々は普段はキャンピングカーや特殊車両を作っている。車の中で用を足すことができる専用のトイレを持っている。今回の被災地の場合、くみ取り式のトイレが多くて、たまってしまうと捨てる場所がなくて、使えないところが多かった。なので今回の開発に至っています」(トイファクトリー 藤井昭文 社長)

 

水を使わないトイレ

2日間でトイレカーを開発

 用を足した後に凝固剤を入れボタンを押すと、熱でフィルムを圧着。

 においが漏れないように密閉してくれ、あとはそのまま捨てるだけというトイレなんです。

 「最初はてこずったが衛生的でいい。夏とか特に違うと思います」(利用者) 

 トイレ問題を知って、2日間でトイレカーを開発し、1月半ばに避難所に届けたといいます。

 「災害時でも役に立つ車を作ることができた。きょうもお昼前に自治体の人と話をしてきた。備えがない所に我々の経験を伝えながら準備しなくてはいけない。意識がかわっていけばうれしいなと思っています」(藤井社長)

 

レスキューストックヤード 代表理事 栗田暢之さん

「訓練とかいろいろな方法で家族で考えてみる」

 この地方で近く起きるといわれる南海トラフ巨大地震。私たちはトイレ問題にどう向き合えばいいのでしょうか。

 「災害時にトイレが使えなくなることを前提にした、訓練とかいろいろな方法で1度家族で考えてみるとか、地域でこの話題を取り上げてみるとか、そういうことは本当に大切。半年分も自分たちでは準備できないので、トイレ用の凝固剤とかは、避難所ごとに備蓄をしておくなど、そういう対策がこれからどんどん進んでいけばいいかなと思います」(レスキューストックヤード 代表理事 栗田暢之さん)

 (3月6日 15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ!+』より)

 

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