ウィシュマさん死亡から3年 医療体制を強化 変わろうとする名古屋入管に密着  

2024年3月7日 11:36

名古屋入管に収容されていたウィシュマ・サンダマリさんが亡くなって3月6日で3年です。メ~テレでは名古屋入管に取材の交渉を続け、今回カメラが入ることができました。名古屋入管はどう変わろうとしているのか。密着しました。

名古屋入管 市村信之局長

 名古屋出入国在留管理局、通称「名古屋入管」。

 局長の市村信之さんは名古屋入管の職員約750人のトップです。

 名古屋入管に出される申請は月に約2万4000件。

 その多くは日本で暮らすために必要な資格、在留資格の「更新」や「変更」の手続きです。

 

名古屋入管で初めてカウンター内の撮影が許可される

より慎重さが求められる永住の許可

 今回名古屋入管で初めてカウンター内の撮影が許可されました。

 申請の種類はビザの更新や変更など様々です。

 必要な書類が揃っているかを確認し、問題がなければ申請を受理します。

 受理した申請は種類別に審査部門に回されます。

 「FEIS」と呼ばれる入管庁独自のデータべースで違反歴などがないかをチェックし、担当者を決めて審査します。

 より慎重さが求められるのが永住の許可です。

「いわゆる結婚ビザ。今持っている在留資格から結婚ビザへの変更の申請を審査している。変更の申請については出会いから結婚に至るまでの期間や交流状況を立証してもらう。結婚の信憑性を漏れなく審査している」(永住審査部門の職員)

 日本人にはあまり縁のない在留資格の申請手続き。

 申請が許可されると、在留カードが発行されます。

 これが名古屋入管で行われる主要な業務の1つです。

 

退去強制にするか否か審査する市村局長

重要な決定は最終的に局長が決裁

 法に違反した外国人を日本から退去させる「退去強制」の判断など重要な決定は最終的には局長が決裁します。

 薬物犯罪で有罪になった外国人1人分のファイル。

 退去強制にするか否か審査します。

「担当官の意見は、もっともだということで退去相当という決裁をした。総合的に判断するのが結構難しくて、1回『担当官の意見の通り』と判子を押したあとも、もう1回見直して本当にこれでいいのかなと」(名古屋入管 市村信之局長)

 外国人の相談に乗るのが入管の仕事、そんなふうに感じる機会が何度もありました。

 ウィシュマさんが亡くなった時は東京の入管庁で、新型コロナの水際対策に追われていました。

「強い衝撃だった。お亡くなりになったわけですから。しかも30代の若い人と聞いてびっくりしましたね」(市村局長)

 

ウィシュマ・サンダマリさん

「情報共有・対応体制も整備されていなかった」

 日本語教師を目指して来日したウィシュマ・サンダマリさんは学校をやめたことで在留資格を失いました。

 その後、交際していた男性のDVから逃れようと警察に相談をしたことでオーバーステイが発覚し、2020年8月名古屋入管に収容されました。

 当初は帰国する意思を示していましたが、コロナ禍の影響で手続きが滞り日本に残ることを希望するようになりました。

 食事を取らず「拒食」と判断されたことも。

 半年にわたる収容生活でウィシュマさんは衰弱し、3年前の3月6日に亡くなりました。

 死因は病死とされています。

 入管庁の調査報告書はウィシュマさん死亡の背景を「そもそも組織として事態を正確に把握できておらず、こうした事態に対処するための情報共有・対応体制も整備されていなかった」と指摘しています。

「名古屋入管に転勤が決まった時に、私も名古屋の様子がよく分かっていなかったので、大丈夫かなと思ったが、来て驚いたのは1人1人が本当にしっかりしているし、3年前の認識をみんなが持ち、重い責任を認識している。収容施設で人の命を預かっている」(市村局長)

 

名古屋入管 間渕則文診療室長

名古屋入管は医療体制を強化

 収容そのものは今も行われていて、人数は2月末で約80人。

 市村局長が向かったのは、収容を担当する処遇部門の事務室です。

 収容されている人の健康状態を幹部職員が医師から聞く医療カンファレンスは2023年4月以降、平日は毎日行うようになりました。

 名古屋入管は医療体制を強化しました。

 それまで非常勤しかいなかった医師に、2023年常勤医師が加わりました。

 常勤医師に就任したのが間渕則文さんです。

 医師を常勤にしたことで継続的な診察がしやすくなりました。

 

間渕さんは職員向けの勉強会も行う

「入管の医療に関してはブラックボックス」

 間渕さんは全国で初めて乗用車型ドクターカーを導入した救命救急医療のエキスパートです。

 救急の現場を離れる決心をしたころに、名古屋入管が医師のなり手がいなくて困っていることを知りました。

「外国人を対象に医療をしないといけないということと、『名古屋事案』というスリランカ人女性が死亡する事案があり、みんな二の足を踏んでいると。他の人がやりたがらない仕事で社会的ニーズがあることをやりたい」(名古屋入管 間渕則文診療室長)

 間渕さんは就任後、診療室に救急対応の機器や薬剤を新たに揃え、職員向けの勉強会も始めました。

 収容という人の自由を奪う権限がある入管にどのような医療を備えるべきか、国民全体で考えていく必要があると間渕さんはいいます。

「入管の医療に関しては“ブラックボックス”。悩むところはあって、入管の医療はすべて公費負担なのでどこまでやるのかが難しい。コンセンサス(合意)を得ようにも国民はほとんど情報を得ていない。入管で展開されている医療がどんなものか一般の人は知らない。私自身も知らなかった」(間渕診療室長)

 市村局長は取材に応じた理由を「積極的に発信していくことを入管もやっていかないといけない」と話します。

(3月6日15:40~放送メ~テレ『ドデスカ!+』より)

 

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