出産のリミットと向き合う…「卵子凍結」を選んだ女性たちの思い
2024年3月20日 14:06
いま若い女性たちの間で関心が高まっている「卵子凍結」。夢への挑戦やキャリアアップ。そして妊娠や出産。女性の新たな選択肢として注目される卵子凍結に迫ります。
卵子の発育を促す注射をうつ絵里さん
女性の卵子は年齢と共に減り、妊娠する力も衰えていくことが分かっています。
そこで若いうちに卵子を取り出し、凍結保存するのが卵子凍結。
妊娠したいタイミングがきたら解凍し、受精させ子宮に戻します。
費用は一般的に25万円から50万円で、卵子の保管料も掛かり高額です。
注目を集めたきっかけは――
「少子化は大きな問題、1つの選択肢として考えられるのではないか」(小池百合子都知事 2022年12月の会見より)
東京都が1人最大30万円の助成をはじめ利用を後押し。
さらにタレントの指原莉乃さんも「今のところ結婚願望無し、卵子凍結済みで生活してます」とSNSで公表し話題になっています。
卵子凍結に興味がある5人
卵子凍結に興味がある5人の本音
実は最近、西尾菜々美アナウンサー(26)も気になっているということで、今回は卵子凍結に興味がある5人が集合。
24歳から32歳、独身の同世代で話しをしました。
「キャリアと妊娠・出産を考えていかなきゃいけない」(西尾アナウンサー)
「もっとやりたいことがある、卵子凍結という選択肢も」(自営業、25歳)
「周りで『卵子凍結どうしよう』と話題になる」(セラピスト、32歳)
まずは結婚や出産について――
「30歳くらいまでに結婚できれば。それまでは仕事を頑張りたい」(自営業、24歳)
「妊娠するのも知り合いは大変で時間がかかっている。ちょっと焦っちゃう」(サロン経営、26歳)
出産率の比較
卵子の老化を示すアメリカのデータがあります。
自分の卵子で体外受精した場合、出産率は30代半ばごろからどんどん低下。
一方、提供された若い卵子を使った場合は歳を重ねても出産率が下がっていません。
つまり、若い卵子を残す卵子凍結は将来にむけて妊娠の可能性を維持できると期待されています。
「なんだろうこのジレンマ。仕事へのやる気がアップすると妊娠の可能性が下がっていく」(西尾アナウンサー)
「結婚したいと思う時が何歳になるかは分からない。今の若いうちに考えておいたほうが」(自営業、25歳)
気になるのはデメリット。
「健康な体に針を刺す」(セラピスト、32歳)
「費用とか…若いうちにできるのかな」(自営業、24歳)
卵子凍結をしても必ず妊娠できるわけではありません。
卵巣を刺激することによる副作用のリスクもあります。
まるたARTクリニック 丸田英院長
3倍に増加した卵子凍結
実は今、卵子凍結を名古屋で行う人が増えています。
まるたARTクリニックでは未婚女性の卵子凍結をひと月に10件ほど実施していて、2020年の3倍に増えました。
まるたARTクリニックの丸田英院長は「親子で(相談に)来るようになりました」と話し、「『子どもの体はどうなんですか?』とか娘より熱心に質問される。過去にはなかった話」といいます。
採卵に臨む絵里さん
私が卵子凍結を選択したワケ
実際にはどのように行われているのでしょうか。
名古屋市に住む30歳の絵里さん(仮名)に密着しました。
採卵の10日ほど前に始まったのが卵子の発育を促す注射で、「点滴よりは全然痛くない」といいます。
毎日自分で打ち、一度に多くの卵子を採卵できるよう準備します。
「体調に変化は?」(ディレクター)
「子宮が張る。ごく弱い生理痛みたいなのはある」(絵里さん)
働きながら愛犬と暮らしている絵里さんに卵子凍結の理由を尋ねると――
「彼が出来て今すぐに授かったとしても難しいというのがあって…」(絵里さん)
去年、恋人ができて将来は子どもを産みたいと真剣に考えるようになりました。
しかし、時期については――
「収入面だったり、今は2人で働いているけど、 (出産すれば)1人に負担がいく。(出産は)しっかり準備できてから」(絵里さん)
採卵の日。
「彼と父と会社の人も知っています。『自然じゃないね』とは言われたけど、私の体なんで」(絵里さん)
卵子を取り出すため、卵巣に針を刺し、卵子がはいる卵胞から液ごと吸い取り、卵子を回収します。
凍結できるのは状態がいい成熟卵のみで、絵里さんは9個を凍結しました。
絵里さんは「早く産んだほうがいいと周りから言われる。卵子凍結していると言えば終わる話。気が楽になる」と話します。
採卵の日、彼は仕事を休み、絵里さんに付き添っていました。
尾藤朋美さん
卵子凍結に希望を託す女性たちの思い
卵子を凍結する事情は様々。
希望を託す女性たちの思いとは――
「将来(妊娠の)可能性が低いよりは選択肢があると思うと、今を頑張れる気がします。費用は貯金で何とか」(卵子凍結した29歳)
「今を頑張れる」と話した女性がもう一人。
尾藤朋美さん(33)は去年の秋、卵子を凍結しました。
尾藤さんは世界屈指の過酷なレースと言われるサハラマラソンで、日本人女性初の2位に輝いた鉄人ランナーです。
夢への挑戦とその後の人生。卵子凍結はどちらも大切にするための選択でした。
「世界一という大きな目標を掲げている。今は走ることに専念していいと(卵子凍結で)思えるので良かった」(尾藤朋美さん)
福井から3時間以上かけて卵子凍結のために病院に通う洋子さん
福井から3時間以上かけて名古屋へ
出産のリミットに悩む独身女性は少なくありません。
福井県に住む洋子さん(仮名、35歳)は地元では卵子凍結ができず、3時間以上かけて名古屋に通っていました。
「結婚できるかもというご縁があったがダメになってしまって、結婚できるタイミングを待っていると出産の可能性が低くなっていくかも。時を過ごすことが希望を削られていく思いだったので(卵子凍結)しようと思いました」(洋子さん)
将来、子どもを授かりたいと願う切実な声に長年、不妊治療に取り組んできた丸田医師は――
「もっと早く自分の体を知っていればもっと早く動いたのに、という言葉を僕は何回も聞いてきた。一つの解決法として卵子凍結は妊娠できなかった人たちのことを考えると非常にメリットがある」(まるたARTクリニック 丸田英院長)
凍結した卵子での妊娠に成功
凍結した卵子で妊娠した女性「やってよかった」
今年1月、名古屋市に住む41歳の女性が凍結した卵子を使い妊娠を試みました。
「当時できる最大の妊活だった」(名古屋市の女性)
結婚したため、39歳の時に保存した卵子を解凍し、受精させ子宮に戻しました。
この日、検査で見えたのは赤ちゃんが入る胎嚢、女性は妊娠していました。
「え!と思いました。賭けみたいな不安があった」(名古屋市の女性)
41歳の出産、無事に産まれてくるまでは評価できない、としつつも“卵子凍結”についてこう話します。
「仕事ばっかりしてきて妊娠・出産にピンときていなかったが、将来子どもが欲しいか向き合うきっかけになった。時間もお金も掛かったけどやってよかった」(名古屋市の女性)
(3月19日15:40~放送メ~テレ『ドデスカ!+』一歩前へより)