山の行楽でクマに注意を 愛知で子どもに「クマよけ鈴」、三重は「クマアラート」検討
2024年7月12日 17:29
山の行楽シーズンがやってきましたが、遊びに行く人は注意が必要です。クマの目撃情報が各地で相次ぎ、けが人も出ています。東海3県では対策グッズを配ったり「注意報」を出したりする動きがあります。
三重県大台町役場で行われた訓練でクマに扮した担当者
人里で相次ぐクマの目撃情報。東海地方でも各地にクマが出没し、けが人も出る事態になっています。そんな中――
「愛知県設楽町の小学校です。登校してくる児童たちのランドセルにはクマよけの鈴がついています」(記者)
設楽町立名倉小学校では、全校児童24人がクマよけの鈴を身に着けて登校しています。自然豊かな山間部に位置する設楽町。町ではクマの目撃情報が増えているといいます。
設楽木材組合が子どもたちに贈ったクマよけの鈴
クマよけの鈴をプレゼント
名倉小学校では、学区が広く長い距離を歩いて登校する児童や山道が通学路となっている児童もいて、クマへの不安を抱えています。
Q.クマが出る話はよく聞く?
「はい、聞きます。やっぱり怖いなって思う」(名倉小学校の児童)
「山が近くにあるから、鈴があると歩いていてクマが近づいてこないから安心になります」(名倉小学校の児童)
クマよけの鈴は、去年12月、設楽木材組合が町に贈ったものです。
名倉小学校のOBでもある組合長の伊藤充良さんが発案し、町すべての小学生以下の子どもの分、約200個を準備しました。
「クマに関しては、町の方からLINEで情報が流れたり、広報で音声で流したりしている。一番歩いている子どもたちの安全のため、今できることはクマ鈴くらいかなということで、組合としてはクマ鈴をプレゼントしました」(設楽木材組合・伊藤充良さん)
クマ撃退用のスプレー
岐阜県では「ツキノワグマ出没注意情報」発令中
対策は岐阜県でも。御嶽山のふもとの切り立った地形に200以上の滝がある下呂市の小坂の滝。
ここでツアーなどを行うNPO法人には、下呂市からクマ撃退用のスプレーが贈られたということです。
「リュックのショルダーベルトに通す」(NPO法人「飛騨小坂200滝」理事長・皆越真佐代さん)
岐阜県では、6月も下呂市で80代女性がクマに襲われて、大けがをするなど人に被害の出る事故が相次いでいて、県は「ツキノワグマ出没注意情報」を発令中。
スプレーの寄贈も、それに伴う動きだということです。
「クマスプレーは消費期限があるので、何本か使って練習するなり、専門家を招いてお話を聞くなり、対策は今後とっていきたいと思っています」(皆越さん)
三重県大台町役場で訓練をするハンター
「現実と訓練は違うと思う」
11日の三重県大台町。ツキノワグマが人里に現れたとの想定で、住民や観光客を守るための訓練が町役場でありました。
人にけがをさせ、逃走中だというクマ。クマに扮した担当者が、本物さながらに駐車場を歩き回ります。
警察官が猟友会のハンターに射殺命令を出しました。真剣な表情で猟銃を構えたハンターが――
「バン」
初の訓練は、無事に終了しました。
実際にクマの対処に当たるハンターは――
「現実と訓練は違うと思う。今日の訓練のような状態になれば対処できないと思う。その点はまた役場ともう少し考えてやっていきたいと思います」(三重県猟友会大台支部・久保忠巳 支部長)
三重県内のツキノワグマ出没件数(三重県まとめ)
“クマアラート”の導入を検討
訓練の背景にあるのは、出没が相次ぐクマへの危機感です。
三重県では昨年度のツキノワグマの出没件数が40件に上り、過去最多の件数となりました。
しかし、今年は4月から7月9日までの3カ月余りで出没件数はすでに44件となり 昨年度を上回っています。
けが人は出ていませんが、9日にあった会見で一見知事は――
「クマアラートというのをいま検討中で、今月中にできれば導入したい。注意報と警報を考えています」(三重県・一見勝之知事)
三重県はクマの出没や人身被害などの状況に応じて出す「クマアラート」の導入を検討。
夏休みシーズンを前に、被害を防ぐ対応に追われています。
岐阜大学応用生物科学部の淺野玄准教授
「クマと人の生活圏が非常に近くなっている」
なぜ、クマの目撃が増えているのか――
野生動物の生態に詳しい専門家は 「クマと人の生活圏が非常に近くなっている」と話します。
「今、中山間地域と呼ばれるところは、どんどん人が減っている。当然人がいなくなると、畑だったところ、水田だったところが、使われなくなって藪になると、動物の生息地になっていく。動物にとっても、人との境がわかりにくくなっている現状はあると思います」(岐阜大学応用生物科学部・淺野玄 准教授)
クマから身を守るためには、どうすればいいのでしょうか。
「皆さんが出かけようとする先で、クマの目撃情報が最近なかったかというのを、調べてもらいたい。ほとんどの地域では、クマの出没情報をホームページで公開しているので、1人ではなく複数の人と連絡を取り合いながら、安全を確認しながら、山に入っていただきたいと思います」(淺野准教授)