パリパラ200mに出場 義足のスプリンター井谷俊介選手 原点に立ち直れたのが前に進む力に
2024年8月29日 18:02
29日に開幕した、パリパラリンピックの話題です。オリンピックの余韻冷めやらぬ中、同じパリの地で開かれる、4年に1度の大舞台。大きな挫折を乗り越え、念願の初出場を果たす三重出身のランナーがいるんです。
オリンピックの感動が再び、パリで!
今度の主役は、パラリンピックの選手たち。
「五輪選手がスポーツを通して力を与えてくれているので、パラリンピックで僕たちも力を与えたい」(井谷俊介選手)
パラリンピック初出場!
200mに出場する義足のスプリンター、三重県大紀町出身の井谷俊介選手、29歳。
去年、アジア人初の22秒台をマークしたメダル候補です。
井谷俊介選手
出場が内定したときは「安堵の気持ちが大きかった」
Q.パラリンピック出場が内定したときの気持ち
「うれしいとか喜びよりも、ほっとした気持ち、安堵の気持ちが大きかったです」
Q.それはどうして
「もし出られなかったら、この3年間の挑戦もまた意味がなかったんじゃないかって。最悪を想像するようになってしまった」
脳裏によぎっていたのは、3年前の出来事。
いるはずだった東京パラリンピックに、彼の姿はありませんでした。
「努力なのか日頃の行いなのか、何か1つピースが合わないのが僕の人生っぽい」
事故後、パラ陸上に出会う
失意のどん底から救ったものとは…
今から8年前の2016年、不慮のバイク事故に遭い、壊死した右足を切断せざるを得なかった井谷選手。
失意のどん底から救ったものこそ――
義足の体験会で出会った陸上でした。
「自分の力で芝生の上を走った。その時の風をきる感覚がすごく気持ち良くて。何とも言い表せないぐらいの楽しさでした」
事故から2年。
本格的に競技を始めると、1年目にしてなんとアジア記録を樹立!
すさまじいスピードで成長していった新星は、東京パラリンピック出場も確実視されていました。
井谷選手と濱田隼メ~テレアナウンサー
生きる希望だった舞台が幻に
ところが――
新型コロナでパラリンピックが1年延期した間に、強力なライバルが出現。
成績不振も重なり、生きる希望だった舞台が幻となりました。
「代表に落選した時は、心の灯がパッと消えてしまって。生きている意味、あしたをどう頑張るかを全く考えられない。抜け殻のような状態になってしまった」
Q.立ち直れた要因は
「立ち直るまで半年以上かかってしまったけど、パラリンピックを目指そうと、夢を描いた瞬間を振り返っていく中で、東京パラリンピックだけがすべてじゃなかった。僕の周りにはたくさん応援してくれる人がいて、パラリンピックに出てみんなを喜ばせたい。その夢に向かって挑戦しようと、原点に立ち直れたのが前に進む力になりました」
2022年に拠点を愛知に移し、現在は公共施設で個人練習をしている
1人で競技に向き合う時間の大切さ
落選を機に、大学時代をすごした愛知に拠点を移し、心機一転再スタート。
以前は、オリンピック選手も所属する東京のチームで活動していましたが、今は市民ランナーと変わらず公共の施設を借りて個人で練習。
1人で競技に向き合う時間こそが、大事なことを気づかせてくれたと言います。
「以前は練習を、ただやっているだけの自分がいた。なんでこのトレーニングをするのか?このトレーニングは何につながるのか?練習の向き合う姿勢が変わって、すごく成長につながりました」
競技用の義足をたわませるには、踏む筋力が大事
速く走るため、鍵を握るのは「義足」
いかに速く走るのか、鍵を握るのは、何と言っても競技の時に使用する義足。
実際に井谷選手が履く義足を触らせてもらうと、硬すぎてたわまないという驚きの事実が。
「思っているほどたわまない。実際は硬いんだって、みなさん驚く」
Q.どうやってしならせる
「太ももの筋力と重心の位置によって、しっかりたわませられる。踏む筋力がすごく大事」
だからこそ、筋力トレーニングも必要不可欠。
トレーナーから与えられるメニューの意図をくみ取りながら、日々鍛える姿がありました。
アジア記録を4年ぶりに更新し、パリパラリンピック出場の決め手に
アジア記録を4年ぶりに更新
こうした努力が実を結び、去年4年ぶりに日本代表へと返り咲くと――
自身が持つ200mのアジア記録を4年ぶりに更新!
見事アジア王者に輝き、この結果がパリパラリンピック出場の決め手となりました。
走り切った時に、楽しかったと思えるレースがしたい
「たくさんの人に喜びを届けたい」という思い
現在拠点に置く春日井市からも送り出されるなど、3年の月日を経て、笑顔にさせたい人もさらに増えた井谷選手。
根底にある思いは、今もまったく変わりません。
「パラリンピックに出て、たくさんの人に喜びを届けたい!笑顔になってもらいたい!」
いよいよ、念願が叶う時がやってきます。
「今メダルが見える位置にいるので、メダル獲得を最大限の目標に。結果メダルを取れれば一番の喜びだけど、走り切った時に楽しいレースだったって思えるようなレースにしたい」
(8月29日15:40~放送メ~テレ『ドデスカ+』より)