子どもたちに笑顔を お弁当と一緒に“特別ケーキ”提供 子ども食堂の挑戦
2024年9月25日 17:14
“甘くて優しい”子ども食堂が、名古屋市にあるそうです。ひとり親家庭を支援する、子ども食堂。弁当と一緒に、特別な思いが詰まったあるものを提供し、子どもたちを笑顔にしています。
名古屋市東区の「キッチンキング 子ども食堂」。
ひとり親の家庭を対象に、毎週水曜日に実施しています。
こちらの子ども食堂は「パントリー型」といわれるかたちで、無料で手作りのお弁当や麺類、調味料などを提供しています。
「元々うちのおばあちゃんが、ご飯がちょっと食べられないような人を、よく家でご飯を食べさせたりしているのを、僕が子どものころに見ていたので。自分も、ゆとりができたらやりたいなと」(キッチンキング 子ども食堂 山野元久さん)
3年前に調理器具の販売店を改装
お弁当についてくる“あるもの”とは?
3年前に調理器具の販売店を改装し、子ども食堂を始めた店主の山野元久さん。
利用者には事前に予約をしてもらいますが、多い日には100食のお弁当を作ることも。
そして、そのお弁当には特別な思いが詰まった、あるものが一緒についてきます。
それは、ケーキです。
「子ども食堂で弁当は、ある種当たり前なので。そこにケーキがプラスあると、すごくお子さんは喜んでくれますね」(山野さん)
パティスリーアングレーズ(名古屋・千種区)
ケーキを提供するのは…
ケーキを提供するのは、名古屋市千種区のケーキ店「パティスリーアングレーズ」の小田原益広さん。
ギターのケーキやサメのケーキなど、お客さん一人ひとりの思いや要望に応えるオーダーメイドのケーキが人気の店です。
「お母さんが退院するということで、ミシンを使うのが好きだから『ミシンの形のケーキ作れますか?』とか」(パティスリーアングレーズ 小田原益広さん)
2年前から子ども食堂にケーキを無償提供
ケーキを通して、子どもに支援を
小田原さんはケーキを通して、子どもへ何か支援ができないかと考えていました。
「スイーツは何かしら、お弁当とは違う力があると思うんですよね。それによる喜びは、ひとしおだと思うので。それを届けてあげたいなと」(小田原さん)
共通の知人を通して2年前から、山野さんの子ども食堂でケーキを無償で提供することになりました。
「フードバンク」で生ものは、受け入れや提供が難しい
「生もの」を当たり前に提供するのは難しい
ただ、ケーキのような生ものを、子ども食堂で当たり前のように提供することは難しいといいます。
多くの子ども食堂が頼るのが、「フードバンク」などに集まった企業や個人から提供された食料品です。
フードバンクで一度保管され、必要に応じて食料品を提供するため、賞味期限の短い生ものは、受け入れや提供が難しいといいます。
「食品を、安全に使用していただくのが大前提。安全に使ってもらうために、賞味期限が短い“生もの”は僕たちは扱えない」(セカンドハーベスト名古屋 前川行弘理事長)
神戸大学・京都経済短期大学 小島理沙教授
「オペレーション上の問題が一番大きい」
食品の循環やフードロスなどを研究する、専門家は――
「フードバンクなどが大変なのは、集まった食品を困った人に届ける費用。何回も、いつでも簡単に届けられるわけではないから、一回集めておく。あまりに賞味期限が短いものだと、届けにくいというオペレーション上の問題が一番大きい」(神戸大学・京都経済短期大学 小島理沙教授)
スポンジの上の部分を使って作った「スポンジのぼうし」
年中無償でケーキを届けられる工夫とは?
また、食料品の価格高騰もある中、それでも小田原さんが子ども食堂に年中無償でケーキを届けられるのには、ある工夫が――
「スポンジを毎日焼いて、バースデーケーキかデコレーションケーキにするときに、上の部分を使うことがない。残ってしまう。スポンジの焼き面を使って、社会貢献ではないが、何か違う形にならないかなと考えたときに、それに生クリームサンドして、“スポンジのぼうし”と呼んで子ども食堂に届けたら喜ぶんじゃないかなと」(小田原さん)
スポンジに生クリームをたっぷり挟み、粉砂糖を振りかけ、完成したのがこの「スポンジのぼうし」。
「スポンジのぼうし」は子どもたちに好評
「スポンジのぼうし」は子どもたちに好評
子どもたちの元に届くまで痛まないように冷凍し、お店の定休日でもある水曜、子ども食堂に運びます。
「おいしそう。今食べちゃおうかな~、袋のまま食べちゃおうかな~」(利用者)
「ふわふわのケーキ。ふわふわでクリームがいっぱい入っている。家に帰って、きょうのおやつにしようかな…」(利用者)
Q.我慢できそう
「たぶん」(利用者)
パティスリーアングレーズ店主 小田原益広さん
利用する親にも喜ばれる
子どもたちだけではなく、ここを訪れるお父さんやお母さんにも喜ばれています。
「ケーキは普段、誕生日とか特別な時にしか食べないので、いただける時はすごくありがたい」(利用者)
「威張っていえることではないが、普通の食事はともかくとして、やはり、おやつやお菓子とか欲しがるけれど、手が出しにくいので、いただけるのがすごくありがたい」(利用者)
「ケーキあるよって言われたら、いえーい!ってなるじゃないですか。子どもたちに届けられるし、僕たちもそういう活動ができているという喜びもあるしというのを、両極でできればうまくいくのでは」(小田原さん)