「公約は実現するためのもの」愛知・岡崎市の内田前市長が返り咲き 実現しなかった公約が勝負の決め手か

2024年10月7日 23:40

6日投開票のあった愛知県岡崎市の市長選。焦点の一つが、実現しなかった4年前の公約「市民一人5万円還元」の評価でした。

 6日投開票があった愛知県の岡崎市長選。前の市長・内田康宏さん(71)が6万8千票あまりを集めて当選しました。 

 選挙戦を戦ったのは内田さんのほか、いずれも無所属の現職、中根康浩さんと新人2人です。

 内田さんが、今回の選挙戦で力を込めて訴えたのはーー

 「今から4年前、3回目の市長選挙に立候補いたしました。しかし当時、私の力不足そして現市長が達成しなかった『5万円を差し上げる』という戦略の前に敗れてしまいました」(内田さん)

 選挙戦の争点の一つにあげたのが、4年前の公約です。現職の中根さんは4年前の市長選で「1人5万円還元」を公約に掲げました。

 約38万人の市民に5万円を配るという政策でしたが実現には、約195億円が必要でした。

 公園や文化施設の整備に充てる基金を廃止するなどして財源を確保しようとしましたが、市議会の理解を得られず財源確保に失敗。公約に掲げた「5万円還元」は実現しませんでした。

 

中根康浩さん

かつての公約が勝敗を分けたか…

 そして迎えた今回の選挙戦--

 内田さんは、前回落選するまで市長を2期務めた実績を訴えたほか、中根さんが5万円還元の公約を実現できなかったことを批判。

 中根さんを約8200票差で破って、4年ぶりに市長に返り咲くことになりました。

 「公約とは、もちろん実現するためのもの。4年経ったので忘れてしまったという人もいるが、前回の中根氏の公約を信じて投票した人はいまだにしっかり覚えている人が多い」(内田さん)

 一方、敗れた中根さんは、実現できなかった5万円還元の公約についてーー

 「公約は目指すべきもの。実現できなかったということであって、守れなかったと言われると心外。公約をかかげて当選した市長が提案したものに対して、どんな理由あっても尊重されて議会も同意すべきものになってしまうので、実現しないといけないものしか公約できなくなる」(中根さん)

 

岡崎市民

今回の結果に有権者の反応は…

 有権者はどう判断したのでしょうか。

 「5万円公約はどうせ嘘だと思っているから。初めからできるわけないと思っていた」(岡崎市民)

 「5万円の公約でつれられて投票した人もいるから、5万円くれたらよかったけどくれていない。嘘つきじゃないですか。嘘つきはいけません。できないことは言ってはいけないし、言ったら守らないと裏切り者じゃないですか」(岡崎市民)

 現職の市長が果たせなかった5万円還元の公約。政治学や地方自治に詳しい名城大学の昇秀樹教授はーー

 「前回は『5万円もらえるならいいことかな』と思って投票した人もいたと思うが、議会に反対されて実現できなかったし、『そもそも5万円は妥当な政策ではなかった』と思う市民が増えた結果が今回の選挙」(名城大学 都市情報学部・昇秀樹教授)

 

名城大学 都市情報学部・昇秀樹教授

議会の判断で公約実現せず

 昇秀樹教授は選挙の公約といえども、物事を決めるプロセスには市議会の判断があることを強調します。

「市長は多分いい政策だと思って提案したんでしょうけど、議会は『それは税金の使い道としてこの使い方ではない』と判断したから『ノー』と言ったわけで、議会が悪者で市長が被害者という捉え方はおかしい」(昇教授)

 前回の2020年の選挙は新型コロナウイルスの感染が拡大し、暮らしを支える支援策が求められた中での選挙戦でした。当時3期目を阻まれた内田氏はーー

「同じ時期に7つの市町で同じように『10万円あげます』、『5万円』、『3万円』って出た。全部現職が負けているわけです。国が10万円を配ったタイミングで戦略でやられたら、どんな街でも多分ほとんどひっくり返っています」(内田氏)

 

内田康宏さん

公約に伴う責任

 選挙戦術で掲げた5万円還元であっても、政治家には公約に対する責任はあると言います。

 「政治家はやりたいと言っても『ノー』を突きつけられることはあります。その場合は潔く引退だし、仕事をしていく中で『もっとやってくれ』とたたかれるかもしれない」(内田氏)

 「議会が通らないことも含めて候補者は公約に責任を持つべきで、自分が言って議会が拒否したから自分はまったく責任がないのはおかしい。それを見通しながら公約を掲げるべき」(昇教授)

 

公約とは

改めて公約とは…

 改めて「公約」とは何か、政治学に詳しい名城大学の昇教授によると、候補者が有権者に対して示す約束事だと言います。

 当選した候補者は、公約が実現するように議会を通す努力もするべきと指摘します。

 ただ、大災害や経済危機などの思わぬ環境変化で、任期中に公約が実現できない場合は、「できなくなった理由」を市民に丁寧に説明し、代わりとなる施策の実現に向けた努力を重ねるべきだといいます。

 

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