名古屋で広がる「モルック」の輪 年齢や性別問わず楽しめるスポーツで“居場所づくり”に
2024年11月9日 09:01
「モルック」を知っていますか? フィンランド発祥のレクリエーションスポーツで、性別や年齢に関係なく気軽に楽しめると最近注目されています。名古屋では、このモルックを通じた人の輪が広がっています。
名古屋モルッカーズ代表の首藤和範さんと副代表の小口陽香さん
10月26日の朝、名古屋市中区のミニスポーツ広場に「カコーン」という乾いた音と笑い声が響いていました。
集まっているのは、若者からシニアまで約25人。名古屋を拠点に活動する「名古屋モルッカーズ」の交流会です。
モルックを通して、性別や年齢に関係なく、あらゆる人に居場所を提供することを目指す団体です。毎月2~3回、土曜日に交流会を開き、誰でも自由に参加することができます。
現在、約500人が名古屋モルッカーズのオープンチャットに参加していて、愛知県では最大級のモルックチームです。
(左)ゲーム開始前のスキットル (右)ゲームが進むと広がるスキットル
モルックとは?
モルックとはどんなスポーツなのでしょうか。
モルックは、木の棒(モルック)をアンダースローで3.5m離れた木の棒(スキットル)に投げ、倒して得点を競います。
アンダースローであれば、どんな持ち方でもOK。2チーム以上で対戦し、順番にモルックを投げてスキットルを倒していきます。
スキットルが1本だけ倒れたら、倒れたスキットルに書かれている数字が点数になります。複数本のスキットルが倒れたら、“倒れた本数”が点数となります。
スキットルは倒れた地点に再び立てられ、ゲームが進むとスキットルが置かれる範囲が広がって、倒すのが難しくなっていきます。
いずれかのチームが50点を先取するとゲーム終了ですが、50点を超えてしまうと25点に減点され、ゲームが続くので注意が必要です。
母国のフィンランドでは、サウナとビールを楽しみながらプレイされている気軽なスポーツです。
交流会の参加者に、モルックの魅力を聞いてみると――。
「必ずメンバーと作戦を話す機会がある。『どこを狙えば勝てるかな』『この数字を狙って同点に追いつこう』とか。ゲームを通して初対面の人と会話ができるのが楽しい」(20代)
「普段人と話す機会がなくても、ここに来ればモルックを通していろんな年齢の人に会うことができるし、いろんな話ができる。ここのメンバーに会いたくて通っているところもあります」(40代)
「人とコミュニケーションを取るのが苦手だった」と話す首藤和範さん
大学時代にモルックと出会った首藤さん
名古屋モルッカーズの代表は、兵庫県姫路市出身の首藤和範さん(31)です。モルックに出会ったのは、岡山の大学に通っていた時でした。
「人とコミュニケーションを取ることが苦手な性格で、サークルに入っても同年代に馴染めず、学生相談室に『友達ができません』と相談しました。するとカウンセラーの先生から『面白い先生がいる』と、大学の准教授の先生を紹介してもらって。その准教授が学童保育にかかわっていた関係で、ある日研究室に現役の学童保育の先生が来ていました。その先生がモルックのセットを持っていたんです」(首藤さん)
初めてモルックを見た時、首藤さんも何に使う道具なのか全くわかりませんでした。
「先生に聞いて体験してみて、意外と面白いな、やってみようかなという気持ちになったのがきっかけです」(首藤さん)
初心者にモルックのルールを説明する首藤さん
就職した名古屋で感じた孤独
モルックにはまった首藤さんですが、大学を卒業すると名古屋の企業に就職することになり、モルックから離れてしまいました。
「大手電気メーカーのエンジニアとして設計の仕事を1年間やっていましたが、だんだん辞めたいと思うようになって…。名古屋には友達もいないし居場所もなかったので、友達作りや居場所を求めて交流会などを転々としていました」(首藤さん)
モルックを思い出したのは、たまたま参加した「旅好き飲み会」でした。
「飲み会で『好きな国や行ってみたい国をプロフィールで書いてください』というのがあって、そこに『フィンランド』と書いている女の子が目の前に座っていました。『そういえばモルックはフィンランドのスポーツだよな』と思い出し、『モルックって知ってる?』と聞いてみたら、『知ってる』と答えてくれて、そこから会話が盛り上がりました」(首藤さん)
他の参加者から「モルックって何?」と聞かれ、モルックのルールや学生時代のエピソードを話すと、「面白そうだからやってみよう」と声が上がったといいます。
「会話のネタからまさかの反響が起きて。僕も何かやりたいことを探していたので、『これも何かのご縁かな』と思い、名古屋の地で4年前にモルックを再開しました」(首藤さん)
モルックは性別年齢関係なく、すべての人が参加できる
モルックを、すべての人の居場所づくりに
再びモルックを始めた首藤さんに、ある気持ちの変化が起きたといいます。
「最初は、ただ純粋に趣味としてモルックを楽しんでいただけでしたが、いろんな参加者が集まっていろんな話をするうちに、コミュニティが大きくなっていきました。『モルックで遊ぶだけで、すべての人にとっての居場所づくりができる』ということに気づいたんです」(首藤さん)
“居場所づくり”という目的ができた首藤さんは、「名古屋モルッカーズ」を結成。約4年かけて、愛知県のモルックコミュニティの中で一番人数の多いモルックチームに成長しました。
交流会の後に開くランチ会
周りの参加者と支え合い成り立ってきた
名古屋モルッカーズは、決して1人の力ではなく、参加者と支え合うことで成り立っていると語る首藤さん。
交流会の後にランチ会を開くほか、バスツアーやバーベキュー、メンバーの誕生会など、モルック以外でも積極的に交流できるようにしています。
また社会人も気軽に参加できるよう、夜に開催する「ナイトモルック」や、土日に休めない人のために「平日モルック」を開くなど、モルックの活動も多岐にわたります。
「モルッカーズの仲間には、マイクロバスの運転免許を持っている人など、いろいろな特技を持っている人がとても多く、いろんなことができます。せっかくモルックで繋がったご縁なので、集まってくれた人たちにもっともっと楽しいことを提供したい。モルック以外に楽しいイベントを、今後もたくさん企画していきたいと思っています」(首藤さん)
名古屋モルッカーズのメンバーたち
“人見知り”に参加してほしい
首藤さんは、“人見知りの人”にこそ、ぜひモルック交流会に参加してもらいたいといいます。
「人見知りの人って、初対面の人に緊張感を覚えることが多い。それは人と関わりたいからだと思うんです。そういう人にこそ、モルック交流会に来て欲しい。『仕事の都合で1人になってしまった』とか、『昔の友人と話が合わなくなってしまった』とか。僕は、そんな新しい出会いを求める人の気持ちがすごくわかるので、そういった人たちを今後もサポートしていきたい」(首藤さん)
(メ~テレ 飯田莉穂)