【名古屋市長選】「市民税減税」が争点の一つに 市民の減税に対する思いと候補者の主張

2024年11月12日 19:46

11月24日が投開票の名古屋市長選。「市民税減税」を続けるのかが争点の1つとなっています。候補者、そして有権者は、どう考えているのでしょうか?

「市民税の減税」について市長選の候補者たちの考えは?

河村市政の“継承”か“刷新”かが大きな争点

 10日に告示された、名古屋市長選。過去最多タイとなる7人が立候補し、河村市政の“継承”か“刷新”かが大きな争点となっています。

 その1つが「市民税の減税」のあり方です。

 市民税は、収入などに応じて市民が納める税金で、さまざまな行政サービスに必要な費用をまかなうために使われます。

 今年度でみると名古屋市では個人、法人をあわせた市民税で約3千億円の収入を見込んでいて、これは市の一般会計予算の約2割にあたります。

 

2012年度からは、5%市民税減税が続いている

「既得権益打破」の象徴として…

 2009年に初当選した河村前市長。

 「既得権益打破」の象徴として、“肝いり”の公約で掲げたのが「10%市民税減税」でした。

 市議会でのさまざまな議論を経て、2010年度に1年限定で「10%」の減税が実現。

 2012年度からは、減税幅を「5%」にしての減税が続いています。

 名古屋市によると、昨年度の市民税減税額は約96億円でした。

 

2023年度 市民税減税の適用状況

市民側から見た、実際の減税額は?

 市民の側から見ると、実際の減税額はどれくらいなのでしょうか。

 名古屋市が公表する夫婦と子ども2人の4人家族のケースでは、年収300万円なら減税額は年間1300円、年収1000万円なら減税額は年間1万6200円と、収入によって減税額に幅があります。

 また、1万円を超える減税のあった市民が全体の1割ほどにあたる約25万人いる一方、市民の半数近い111万人は、もともと市民税を納めておらず、減税の対象ではありません。

 

名古屋市民

減税の効果について

 名古屋市長選の争点のひとつとなっている、減税。

 その効果を、市民はどう感じているのでしょうか。

 Q.減税の効果感じる
 「全然なし。年金をもらっていても、引かれるほうが多い。手取りが変わらない、全く一緒。減税されている感じはない」(名古屋市民)

 Q.減税自体については
 「多少なりともうれしいこと。していただかないよりは、政策にあることがすごいと受け止めている」(名古屋市民)

 また、収入の低い人に減税の効果が出づらい仕組みについては――

 「格差がすごくある気がして、(所得が)少ない方にもう少し目を向けてほしい。父子家庭や母子家庭など、大変な方たちの援助になるような政策になればいいと思います」(名古屋市民)

 

広沢氏は、減税の継続と「10%減税」へ減税額を引き上げる考え

候補者たちの考えは…

 年間で、約100億円に及ぶ市民税の減税。

 市長選に立候補している候補者たちは、どう考えているのでしょうか。

 河村前市長の後継とされる、前副市長の広沢一郎氏(60)は――

「河村市政の原点である市民税10%減税、これをもう一回やりたい。減税幅を倍にしたい」(無所属・新人 広沢一郎氏)

 減税の継続とともに、河村前市長が当初掲げていた「10%減税」へ減税幅を引き上げるとしています。

 

大塚氏は、減税継続の是非を判断する考えを示す

減税継続の是非を判断する考え

 これに対して、前参議院議員の大塚耕平氏(65)は――

 「議会、市民のみなさんに説明したうえで、減税は効果があれば続けるが、効果がなければ、財源の使い方をまた考えないといけない」(無所属・新人 大塚耕平氏)

 減税の効果などを検証し、継続の是非を判断する考えを示しました。

 

尾形氏は、減税施策の継続に反対の立場を明らかに

反対の立場を明らかにしている候補も

  政治団体共同代表の尾形慶子氏(67)は――

 「利用できるはずだった行政サービスを削って、毎年100億円分ずつ削っていった。超不公平な金持ち減税はやめないといけない」(無所属・新人 尾形慶子氏)

 いまの減税施策の継続には、反対する立場を明らかにしています。

 

名古屋市長選の候補者

減税の継続か廃止で考えが分かれる

 元会社員の太田敏光氏(76)は、インフラを充実させるため、減税を廃止する考えを示しています。

 旅行会社社長の水谷昇氏(61)は、福祉などの費用へと回すために減税の「即刻廃止」を訴えています。

 元大学講師の不破英紀氏(64)は、社会保障制度などを充実させるため、減税額を減らす考えを示しています。

 元自治大学校教授の鈴木慶明氏(85)は「景気が回復していない」として、減税の「継続」が必要だとしています。

 

減税しても貯蓄に回る分があるため、経済の押上げ効果は限定的

減税しても、経済の押上げ効果は限定的

 そんな減税の効果について、地域経済に詳しい名古屋学院大学の江口教授に聞くと――

 Q.減税の効果について
 「市民の手取りが増えたのは事実で、喜ぶのは確かだと思うが、経済にとってどちらがプラスかは、市民税減税をしない方がプラスになります」(名古屋学院大学 江口忍教授)

 減税しても貯蓄に回る分があるため、経済の押上げ効果は限定的になると指摘します。一方で――

 「例外的な場合ってあり得る。名古屋市が市民税減税をやると知った近隣の市民が、『名古屋市は市民税が安いから引っ越しましょう』と。納税者が増えることによって税収が増えるので、それはプラスになる」(江口教授)

 

名古屋学院大学 江口忍教授

行政が税金の使い方を工夫したかが重要

 また、減税による経済効果の検証は難しいとした上で、行政が税金の使い方を工夫したかどうかが重要だと話します。

 「名古屋市が、本来やらなくてはいけない事業をやらなかった、あるいは支出をケチった。そういうことで100億円をつくったとすれば、それはマイナスになる。そこを含めた検証をしないと、減税の意義は判断できない」(江口教授)

 

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