和風マジック!?伝統芸能「和妻」のプロマジシャン 普段の仕事は〇〇で意外な二刀流

2024年11月2日 11:17

世界大会にも日本代表として出場

 みなさんは「和妻」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
 
 体から突如として和傘が出現したり、いつの間にか扇子が次々増えたりといった江戸時代から伝わる伝統の手品です。

 我々が想像するトランプのカードが消えたり、帽子からハトが出たりといったような西洋から伝わったマジックを「洋妻」と呼ぶのに対し、こう呼ばれています。

 そんな日本伝統の和妻を得意とするプロマジシャンが愛知県刈谷市に住む向井健人さん。実はマジックの国際大会で和妻を披露し、優勝するほどの腕前なんです。

「大学時代に入っていた奇術研究部で和妻のことを知って、4年生の卒業公演でいつもとは違うマジックができないかと思い、それで和妻を選んだのがきっかけです」(向井さん)

 

ベトナムで開かれたマジックの国際大会で和妻を披露する向井さん

日本に少ない伝統芸 ほぼ独学で

 日本の伝統芸能と言われながら、向井さんが和妻の存在を知ったのは大学生のころ。現在、和妻ができるマジシャンはとても少ないと言います。

 「できる人は日本に50人もいないんじゃないかと思います。僕も最初はほぼ独学に近かったです。動画を見よう見まねで真似したり。かつて東京の有名な先生に和妻を習ったことはあるのですが、それ以降は自分で演目を創作することが多いですね」(向井さん)

 鳩やステッキなどの比較的小さなものを出すことが多いマジックに対し、和妻では大きな扇子や和傘などを出現させる派手な演出が多く、難しいのだそう。

 「基本的にマジックはスーツで披露するけど、和妻は和装なので、その着こなしとマジックの演出を結びつけるのもやってみて難しいと感じますね」(向井さん)

 また、演目の中にもストーリーや背景があるので、そこを感じ取ることができるのも和妻の魅力だと言います。

 

碧南高校で「桜吹雪」を披露する向井さん

和妻を知ってもらおうと各地で公演

 日本舞踊なども取り入れているという向井さんの演目は、佇まいなどの一つをとっても美しさを感じさせます。

 数ある美しい演目の中でも、向井さんが得意とするオリジナルが「桜吹雪」。

 桜が芽生えて散っていく様子を表現したというこの演目では、桜に見立てた和紙がきれいに舞います。

 「東京2020オリンピックの時に、この地方に来たカナダの女子バスケ代表チームに日本の"侘び寂び"を知ってもらおうと創作した演目です。実際に披露した時は両手を上げて驚く方や、拍手を忘れてじっと見ている方もいらっしゃって、和妻や日本文化についてたくさんの方から質問をいただきました」(向井さん)

 国際的な舞台にとどまらず、和妻を多くの人に知ってもらうために、あらゆる場所で公演を行っている向井さん。

 取材したこの日も愛知県の碧南高校の文化祭で生徒たちの前に立って和妻を披露。

 得意な桜吹雪はもちろん、ときには生徒を舞台上にお手伝いとして招くなど、約40分間生徒を魅了し続けました。 

 「和妻を今日初めて見たけど、すごくきれいだった。今度YouTubeとかでも見てみたい」(高校2年生)

 「布1枚から大きな傘がポンポン出てきてすごかったし、自分の国の文化のマジックなので親近感がわきました」(高校3年生)

 

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実は二刀流 マジシャンに隠されたもう一つの顔

 華麗な演目で人々を魅了する向井さんにはもう一つの顔が。それは、大学の職員。

 「普段は愛知教育大学の広報課で働いていて、大学のパンフレット制作やホームページを管理する仕事をしています。マジック一本でってなると、お金を稼ぐためにマジックを作らなくてはいけない。そうなると創作を楽しめなくなるので」(向井さん)

 大学職員とプロマジシャン、まったく別の仕事の様に思えますが、2つの職業を経験しているからこその相乗効果もあるんだそう。

 「大学でイベントを行うときに自分でマジックショーを企画できるので、学生や子どもたちを招待しやすいというのもメリットかなと思います。逆に大学職員で培った事務処理能力などはマジックの公演ですごく役に立っています」(向井さん)

 今の言葉で言えば、まさに二刀流の道を歩む向井さん。次回は11月16日(土)愛知教育大学で行われる「第18回科学・ものづくりフェスタ@愛教大」で和妻を披露する予定です。

(メ~テレ 杉野公祐)

 

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