ホストクラブの法令順守は? 「頂き女子りりちゃん」から3千万円 多額の“売掛金”などが問題に
2024年11月7日 19:57
去年、全国的に問題となった「悪質ホストクラブ」。多額のツケ“売掛金”による被害者が後を絶たず、こうした状況を背景にした事件も起きています。その後、変化はあったのでしょうか。
名古屋地裁で有罪判決を受けた田中裕志被告(YouTubeから)
名古屋地裁で7日に執行猶予付きの有罪判決を言い渡されたのは、元ホストの田中裕志被告(27)です。
起訴状などによりますと、田中被告は、東京都内のホストクラブで勤務していた2021年から2022年にかけて、犯罪でだまし取った金と知りながら、客の女から飲食代として現金3850万円を受け取った罪に問われています。
「頂き女子りりちゃん」を名乗っていた渡辺真衣被告(YouTubeから)
「頂き女子りりちゃん」から3850万円
多額の現金を田中被告へ”貢いでいた”とされる客の女は、YouTubeなどで「頂き女子りりちゃん」を名乗っていた渡辺真衣被告(26)です。
起訴状などによりますと、渡辺被告はマッチングアプリなどで知り合った男性3人の好意につけ込み、計1億5000万円以上をだまし取ったなどの罪に問われています。
名古屋高裁は懲役8年6カ月などの判決を言い渡し、渡辺被告側は上告しています。
7日の田中被告の判決で、名古屋地裁は、渡辺被告から受け取った3850万円の現金について「自己の売上金額を上げてホストクラブ内の立場を向上させるため」だったなどと指摘しました。
判決を言い渡された田中被告は、記者の問いかけに反応することなく、裁判所を後にしました。
名古屋の繁華街にも多くのホストクラブがある
「売掛金」と呼ばれる多額の“ツケ”が問題に
「飲食代」を名目にした多額のホストへの支払い。
こうした請求を発端に、客の女性に「売掛金」と呼ばれる多額の”ツケ”を負わせ、売春などをさせる悪質なホストクラブの存在が今回の事件を背景に表面化し、社会問題となっています。
名古屋の繁華街にも、数多くのホストクラブが軒を連ねています。
客をもてなすサービスではあるものの、一部の悪質なホストクラブは、客の支払い能力を超える多額の請求で、客を苦しめる形にもなりかねない状況となっています。
“売掛”で高級な酒を注文したことがあると話す20代女性
ホストクラブを利用する女性は
ホストクラブをよく利用していたという女性に話を聞くと…。
「『可愛いね』とかチヤホヤしてくれる。その環境が私にはすごく刺激的で楽しいなって」(20代女性)
指名したホストを応援する思いで、平均で月に100万円ほど使っていたといいます。
「ホストクラブ高いよなーって。担当のホストとしゃべるのに、私はこんなにお金を払って。『何か面白いこと言えよ』とあおりの部分で。価値があるし、好きだった。好きだから会いたい」(20代女性)
高額なブランデーを注文するようお願いされ、応じたこともあったといいます。
「650万円で『リシャール(酒)をやろうよ』って。『うんわかった』と二つ返事で出せるような金額じゃなくて、自分の中でもすごく葛藤があったんですけど、『やってやろう』と頑張りました」(20代女性)
飲食代金を支払えず、この女性もホストクラブへのツケ「売掛」の経験があったと言います。
「手持ちがなくても、高いシャンパンとかブランデーとかおろしていた。私も何回かありました」
「ホストクラブの世界に染まり、売掛が当たり前になった」と書かれた渡辺被告の手紙
ホストクラブ経営者の本音は
「頂き女子りりちゃん」こと渡辺被告も、ホストクラブに対する売掛金が当たり前のようになっていたと、記者にあてた手紙で明かしています。
「私もその世界に染まっていくうちに、売掛が日常にあるものとして当たり前になってしまいました」(渡辺被告の手紙から)
Q:売掛についての問題点は
「金額などが少し飛躍しすぎたのではないか」(ホストクラブ経営者)
社会問題にもなった、ホストクラブの「売掛金」。名古屋市内にあるホストクラブを経営する男性によりますと、事件を受けて「売掛」を自主的に禁止する店も出てきているといいます。
業界内でもその流れは広がってきている一方で、「売り上げのために売掛は避けられない部分がある」と本音を漏らします。
「ぶっちゃけ売掛がないと数字が上がらないというところも実際あるので」(ホストクラブ経営者)
「売掛」自体を取り締まる法律は、現状はありません。ホストクラブ側の「自浄作用」にゆだねられているのが実情です。
Q:ホスト業界の今後は
「みんなが普通に来られる業界になってほしい」(ホストクラブ経営者)
高額な売掛金そのものを取り締まる法律はまだない
警察庁では風営法改正を視野に議論も
被害防止のため、法改正についても議論が始まっています。
警察庁によりますと、去年1月から今年5月までの17カ月の間に、客に売春を強要するなど、悪質なホストクラブが関係する事件でホストや風俗店関係者など計172人が摘発されました。
今年1月には、愛知県警でもホストの男が売掛金を抱えた女性客に風俗の仕事を紹介したとして、職業安定法違反の疑いで逮捕されています。
警察などは様々な容疑で立件しているものの、「高額な売掛金」そのものを取り締まる具体的な法律はないのが現状です。
警察庁は今年7月、有識者を交えた会議を開き、風営法の改正も視野に入れ、話し合いをスタートさせています。長年放置されていた「支払い能力の低い未成年などに高額な酒の購入を勧める」行為などの問題点についても整理し、対策を議論していく方針だということです。