青緑色の屋根が大きく変化へ ”重要文化財”愛知県庁で屋根のふき替え工事 工事の舞台裏に潜入

2023年11月4日 07:36
ドラマの舞台で使われることも多い愛知県庁は国の重要文化財で、現役の庁舎として使われているのは全国でも珍しいです。青緑色の屋根が印象的な建物ですが、この屋根が数年後、大きく変わる予定といいます。工事の舞台裏にテレビ初潜入です。

愛知県庁の屋根は「帝冠様式」

 11月3日の文化の日、愛知県庁では、普段入ることのできない知事室や貴賓室などが一般公開されました。

見学ツアー参加者:
「高級ホテルみたいな感じ」
「重要文化財になっただけある」

 愛知県政のシンボル、県庁の本庁舎。

 洋風の建物に名古屋城を思わせる和風の屋根をのせた「帝冠様式」と呼ばれるつくりは当時のトレンドでした。
 

竣工時の愛知県庁(提供:愛知県)

 完成は戦前の1938年ですが、今もその姿はほとんど変わっていません。

 たびたびドラマや映画のロケ地にもなる重厚なつくり。

 国の重要文化財でありながら、本庁舎として現役で使われている全国でも珍しい建物に今大きな変化が起きています。
 

屋根の銅板の落下が相次ぐ

老朽化で屋根の銅板の落下が相次ぐ
「愛知県庁の屋根を覆うように大きな囲いができています。囲いの中で屋根の大規模なふき替え工事が行われています」(記者)

 すでに築85年を超えている愛知県庁。

 老朽化から屋根に使われている銅の板が剥がれ落ちることが相次ぎました。

 周囲に危険がおよぶため早急な対応が求められましたが――

「文化財ということで手続きも必要になりますし、OKをもらってからでないと工事ができなかったものですから工事の契約時期も延びている」(愛知県公共建築課 大勢浩史課長補佐)
 

カメラが工事現場に潜入

工事現場にカメラが潜入
 重要文化財であるがゆえに、改修は価値を損なわないよう建設当時の姿が大きく変わらないことが前提です。

 屋根がどのように設置されているのか、過去の詳しい記録もありません。

 現場の調査と並行してのふき替え工事が2023年から本格的に始まりました。

 今回、特別に許可を得て、工事が進む現場にカメラが入りました。

「間近に屋根が目の前にあります。もう触れられるぐらい近くに足場が組まれて、今まさに工事が行われている」(記者)
 
 囲いの中ではすでに屋根の一部がはがされ、中の部材があらわになっています。

「屋根の上に特別にのぼらせていただきました。足元はペコペコしていて薄い銅板が張られているというのがわかります。近くでみると、装飾もありますが、かなり傷んでいるのがわかります」(記者)
 

建設当時の設計図面

「すごくしっかりはんだ付けされている」
 この日は、文化財の保存修理の専門家も現場を訪れ、これからどう工事を進めていくかの確認をしていました。

「丁寧につくってますよ。浮いているところがないので、すごくしっかりはんだ付けされている」(文化財建造物保存技術協会 加藤修治さん)

 地上からは見えなかった装飾部分。当時の職人の仕事が垣間見えます。

「実際に(屋根を)めくりはじめると、前回の職人さんの仕事がすごく良くて、“おさまり”がいいというか、手の込んだ仕事がちらちら見える。(建設)当初の図面があるんですけど、図面には全部描き切れていない、説明しきれていないところがある」(加藤さん)

Q. (ここに)来てみないとわからない?(記者)
「わからないですよね。表側だけ見てるだけじゃ」(加藤さん)
 

建設当時の屋根の銅板が残る

建設当時の屋根の銅板が残っていることが明らかに
 記録では、戦争中武器などの生産に必要な金属が不足したため、愛知県庁の屋根の銅板も使われたといいます。

 その痕跡も現場で見ることができました。

 撤去された屋根は戦後、復元したとされていましたが、一部、建設当時の屋根の銅板が残っていることが明らかになりました。

「当初の(銅板)がどこにどう残っているかわかりませんでした。今回、職人さんと解体を進めていく中で『ここに残っているぞ』と見えたので。それは面白いところでした」(加藤さん)
 

新しい銅板のサンプル

青緑色の屋根から赤褐色の屋根へ
 今後は銅板の下にある部材の強度などを確認したうえで、新しい銅板で覆っていくことになります。

 その新しい銅の板のサンプルを見せてもらうと、形は同じですが、現在の屋根の色とは全く違います。

「今現在は青緑色をしたような状態になっています。銅板が酸化されて色が変わっていく」(戸田建設 山本千春さん)

 現在みられる愛知県庁の屋根の色は、「緑青」といういわゆる金属の”錆び”です。

 新しい銅板にふき替えることによって、もともとの「銅」の色、赤褐色に置き換わるといいます。

 再び青緑色の屋根に落ち着くまでには約30年かかるということです。

「最初見たときは色が変わるので『あれ?』と思う方もいるかもしれない。その辺は徐々に慣れていきますので、じっくり時間をかけて見ていただきたいなと。変化を楽しんでいただきたい」(愛知県公共建築課 大勢課長補佐)

 青緑色の屋根から赤褐色の屋根へ。

 愛知県庁の屋根の葺き替え工事は3年後の2026年にすべて完了する見込みです。

(11月3日15:40~放送メ~テレ『ドデスカ!+』より)
 

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