障害ある子どもの"通学支援" 2時間かけて通う子も…保護者の切実な声「わがままかもしれないけど…」

2023年12月5日 17:03
障害がある子どもが学校に通うための愛知県の「通学支援」。子どもが安心して学校に通えるようになった一方、別の課題もあるようです。

福祉タクシーを使って通学する様子

 北名古屋市の安達大喜さん(14)。特別支援学校に通う中学2年生です。

 生まれつき呼吸器系が弱く、生後6カ月の時にのどの気管を切開しました。

 そのため、たんが詰まりやすく、定期的にたんの吸引が必要です。

「いつもそばに布団を敷いて寝ている。近くにいないと何かがあったときに対応できないから」(父・卓史さん)
「夫婦2人とも熟睡ができていなくて、どちらかが気付いて吸引して…」(母・公恵さん)

Q.ずっと寝不足?
「そうですね。慣れるもんだなとは思っているが、体力的に厳しいとこの歳になると思うこともある」(父・卓史さん)
 

医療的なケアが必要な子ども「医療的ケア児」

医療的なケアが必要な「医療的ケア児」
 大喜さんのような医療的なケアが必要な子どもは「医療的ケア児」と呼ばれています。愛知県では、昨年度の調査で562人とされています。

 大喜さんの朝は、いつも夫婦二人三脚で行います。

「一人だとできないです」(父・卓史さん)
「時間がかかる」(母・公恵さん)
「成長につれて大喜の体重が重くなって妻が抱えられないので、それは自分がやっています。会社には理由を話して出勤時間を遅らせてもらっている」(父・卓史さん)
 

たんの吸引が必要な時は、一時停車して吸引を行う

今年度から愛知県で始まった「通学支援モデル事業」
 午前8時すぎ。訪れたのは、一人の看護師。

 大喜さんの脈拍を測るなど身体に異常がないかをチェックしたあと、運んだ先は「福祉タクシー」です。

 これは、今年度から愛知県で始まった「通学支援モデル事業」。保護者の都合が悪くなった時に、保護者が同乗しなくても看護師をのせた福祉タクシーを使って通学することができます。

 初めての利用のため、母親の公恵さんも同乗します。

 これまでは毎回、公恵さんの運転で通学し、道中でたんの吸引も必要でした。

 しかし、この日は大喜さんの症状をよく理解している看護師が、付きっきりで対応します。

「家の時の様子はよくわかっているが、一緒に車に乗るのが初めてなので、顔色など、家にいる大喜さんと違いがないか確認している」(看護師)

「そこに一回止めてもらえますか? 一回吸引します」(母・公恵さん)

 たんの吸引が必要な時は、一時停車して吸引を行います。
 

普段の様子(安達大喜さんと母・公恵さん)

「今まで通学はワンオペでやっていた」
 午前9時ごろ。30分ほどかけて学校に到着。無事、大喜さんを学校へ送り出しました。

「仕事をしている保護者は、日によって都合の悪い日もあると思う。子どもたちの教育を保証する観点から考えると、制度が広がって毎日学校へ来られるようになることが大切」(愛知県立名古屋特別支援学校 北島淳 校長)

 初めての利用に母・公恵さんは――

「今まで通学はワンオペでやっていたので、それをしなくていいのは安心。自分の負担が減ってありがたいというのがある。これで、私がいなくても大喜が学校に1人で行けるようになれば、仕事もしやすくなるかなと」(母・公恵さん)

Q.これからも使っていきたいか?
「もちろんです」(母・公恵さん)
 

知多市役所を訪れ、通学に関する悩みを市議会議員に訴えた

通学に2時間かかる子どもも
 通学支援を求めているのは「医療的ケア児」だけではありません。視覚障害がある子どもも同じです。

「子供が通学して、学べる環境が得られやすいように、少しでも話を持っていきたい」(視覚障害児の母親)

 10月下旬、愛知県に住む視覚障害がある子どもを持つ保護者らが、知多市役所を訪れ、通学に関する悩みを市議会議員に訴えました。

 愛知県には、盲学校が名古屋市と岡崎市に2校しかありません。そのため、名古屋市と岡崎市から離れた所に住んでいると、通学に2時間かかる子どももいます。
 

視覚障害児の保護者

視覚障害児の保護者「わがままかもしれないけど…」
「盲学校での教育を受けたいが、通学手段で悩むというのが“わがまま"かもしれないけれど、親が頑張ればいいところなのでしょうが、困難なことが結構あるので相談した」(視覚障害児の母親)
「どうしても障害があり、普通の子のように通えないので、安全に親として"わがまま"かもしれないが、楽しく登校できるようになればと」(視覚障害児の父親)

 立て続けに出た”わがまま”という言葉。

 保護者らの訴えに同行した、愛知教育大学の相羽大輔准教授。親たちの切実な声は”わがまま”ではなく、子どもが教育を受けるうえで必要だと話します。

「保護者は日常的に頑張っているが、送迎などでさらに頑張らないといけない。それで移動支援をお願いすることを、"わがまま"と思い込んでしまっている。今回の訴えをきっかけに、1人でも多くの子どもや家族が幸せに教育を受ける権利を保障されるようにしないといけない」(愛知教育大学 相羽大輔 准教授)

(12月5日15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ!+』より)
 

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