逆風の大阪万博、開幕まで10カ月…吉村知事を直撃 準備は間に合う?愛知万博から学べることは?

2024年6月6日 16:46
愛知万博から約20年。来年開催される「大阪・関西万博」は、逆風の真っただ中。建設費の増額に直面し、整備の遅れや関心度の低さが指摘されています。山積する課題に、どう向き合うのか。メ~テレのスタジオで吉村洋文知事を直撃しました。

大阪府 吉村洋文知事

 5月23日、濱田隼アナウンサーが東海地方のテレビ局で初めて建設中の会場を潜入取材しました。

 「万博会場です。まさに工事が行われていて、奥にはシンボルのリングもあります」(濱田隼アナ)

 大阪湾に浮かぶ人工島・夢洲で開催される2025年日本国際博覧会「大阪・関西万博」。

 そのシンボル、1周2kmの「大屋根リング」は9割が完成しています。

 「間近で見るとものすごく迫力、存在感を感じます。近づいていくとほんのり木の香りがします。柱と梁の組み合わせで作られ、奥まで続いています。これが1周つながる。壮大です」(濱田アナ)

 高さ12mほどのリングから会場を見渡してみると──

 「徐々にパビリオンが建ってきています。ただ完成がどうなるか、想像できるかと言われれば、ここからなんでしょう。まだまだ完成までは時間がかかりそうです」(濱田アナ)
 

タイパビリオン イメージ

海外パビリオンには準備の遅れに懸念の声も
 テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。

 東海地方からは、三重県がブースを出展。また、海外パビリオンについては、161の国と地域が参加を表明していますが、準備の遅れが懸念されています。

 「ちょっと遅いのではと思う」(万博工事 関係者)
 「あんまり進んでいない。工事自体が」(万博工事 関係者)

 日本国際博覧会協会によりますと、パビリオンを自前で作るのは53カ国です。

 このうち8カ国がいまだに着工に至っていない上、14カ国については、施工業者すら決まっていないといいます。

 背景にあるのは、人件費や資材価格の高騰。

 また、万博は5年に1度、開催されていますが、新型コロナの影響で前回の「ドバイ万博」が1年延期されたため、大阪万博に向けた各国の準備期間が短くなったことも影響しています。
 

大阪府 吉村洋文知事

膨らむ会場建設費
 さらに──

 「今回、2回目の増額、500億円の増額になったこと、府民のみなさん、国民のみなさんにおわびします」(大阪府 吉村洋文知事)

 会場建設費も膨らみ、当初は1250億円でしたが、2度に渡って増額。去年11月には、2350億円となりました。

 そして、全国的な盛り上がりも課題です。

 大阪府と大阪市が去年12月、全国の6000人を対象にアンケートを実施したところ、万博へ「行きたい」「どちらかといえば行きたい」と答えた人は、33.8%で2年連続で減少する結果となりました。
 

万博開催時の愛知県知事 神田真秋さん

「開幕後の評判の広がりがカギ」
 2005年、愛知県で開催された「愛・地球博」には目標を超える2200万人が来場しました。

 185日間の期間中、毎日会場に足を運び、皆勤賞を授与されたことで知られる、「万博おばあちゃん」こと山田外美代さん。

 愛知でも感じた、万博を盛り上げていく鍵は、開幕後の「変化」だと指摘します。

 「商売でも開店して、人が来ないまま続けることはない。変化があるパビリオンに人が来た。それでいいと思う。最初から『万博すごいんだぞ』ではなく『来てもらって評価してください』がいいと思う。“商人”に学んだことを生かしたら、大阪らしいところが出るのではないか」(愛知万博に毎日通った 山田外美代さん)

 当時、知事を務めていた神田真秋さんは、成功した理由の1つに「市民参加」を挙げます。

 「海外の人と楽しく交流できたことが、結局リピーターにつながった。珍しいものをただ見せるだけでは、わざわざ行く価値があるかということになる。決して入場料は安くないから」(万博開催時の愛知県知事 神田真秋さん)

 そして、開幕後に評判がどう広がっていくかもカギを握っていると話します。

 「お客様は面白いと思ったら必ず行く。どこかでスイッチが入るかどうか。珍しいものがあるということよりも、それを見た人や行った人が『楽しかった』『面白かった』『もう一度行きたい』という声が口から口に伝播することが大きい。SNSだとあっという間に広がる。良い印象がずっと広がっていけば完全にスイッチが入る。火が付く」(神田さん)
 

『ドデスカ+』に出演した大阪府の吉村洋文知事

吉村知事を生直撃!
 5日、メ~テレ『ドデスカ+』に出演した大阪府の吉村洋文知事。問題となった会場の建設費について──

 Q.さらに増額はないですか?
 「ないようにします。会場建築費はもうこれ実はかなり進んできている。最終盤の状態になってきている。あと約10カ月で会場が完成するわけですから。そういった意味ではこれから値上がりする分も含めた上での予算を作って契約に入っているので、ここから値上げすることはないようにしっかりやっていきます」(大阪府 吉村洋文知事)

 また、課題の「集客」については、前売りの入場チケットがすでに販売されていることにも触れ「目標を達成できるよう取り組む」と話しました。

 「前売り券なんですけど、いま販売していまして、4000円~6000円で買えるようになっています。大切なことは万博の中身だと思ってます」(吉村知事)

 さらに、盛り上げのための“秘策”については──

 「京都大学の山中教授が発明された、iPS細胞から心臓と同じ動きをするiPS細胞を実際に初めて見ることができるiPS心臓の展示をしようと思っています。空中を浮く靴や光る植物など、いろいろ大阪パビリオンで出そうと思っているが、あくまで大阪パビリオンの1つの話で90のパビリオンがあるので、これから中身がどんどん出てくるので、僕も積極的にそれを発信していきたい。中身を伝えていくのが大事」(吉村知事)
 

愛知万博で話題となった受付のロボット

愛知万博の経験者も支える大阪万博
 大阪万博で会場運営のプロデューサーを務める石川勝さん。

 実は、愛知万博にも関わった経験を持ち、当時は、平日と休日の入場料に差をつけて混雑緩和につなげるなどスムーズな運営に向け、取り組みました。

 「今回はその時の成果と反省を踏まえて、もっと来場者数の平準化ができるように取り組む」(大阪・関西万博会場運営プロデューサー 石川勝さん)

 愛知万博で話題となった、受付のロボット。4カ国語に対応し、会話の内容を蓄積して、さらにスムーズなコミュニケーションが可能になるなど、“AIの先駆け”ともいえる技術でした。

 「いまのAIと比べるとまだまだだったが、半年も会場で案内をしていると、会話のQ&Aが蓄積されていく。最初のころはうまく答えられなかったものが、会期の後半になると素晴らしく適切に答えていて、私もびっくりしたことを覚えています」(石川さん)
 

大阪・関西万博会場運営プロデューサー 石川勝さん

開幕に間に合うのか?
 今回の大阪万博でも驚きの仕掛けを用意していると自信をのぞかせます。

 「万博ではいろいろな形で世界各国のそれぞれの立場からの課題と取り組みを知ることができる。例えば空飛ぶ車、水素を使った船など会場内を移動する乗り物にも先端技術がたくさん使われている」(石川さん)

 一方、すべてのパビリオンが開幕に間に合うか聞いてみると──

 「開幕には絶対間に合うように進めていくことに尽きる。一部のパビリオンが開幕日に間に合わないのは、世界のいろいろな万博でもよく起きること。残念ながら今回も起きるかもしれないが、そのことで万博が開幕できなくなることは決してない」(石川さん)

 現場からも、工事の進捗に不安な声が上がっている大阪万博。

 吉村知事も「開幕に支障が出るような遅れにならないようにする」と強調しました。

 「日本が進めているパビリオンや民間のパビリオンなど、大屋根も含めて着実に予定通り進んでいる。ただ、海外のパビリオンは確かに時期がタイトになってきているので、必ず4月に間に合わせるように他の海外の国々と調整しながら進めています。生みの苦しみもある中で僕自身も今感じているところでもあるが、素晴らしい万博を実現したいという熱い思いが最も重要だと思います」(吉村知事)

(6月5日15:40~放送 メ~テレ『ドデスカ+』「特報プラス」より)
 

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