【摘発の瞬間】違法薬物やコピー商品の密輸阻止 “最後の砦”水際対策の最前線  名古屋税関に密着

2024年7月20日 05:01
東海地方の空の玄関口、中部空港。外国人男性の意外な持ち物からは、違法薬物の陽性反応が…。水際対策の最前線で活躍する名古屋税関に密着しました。

手荷物検査をする麻薬探知犬

違法薬物に反応する麻薬探知犬
 中部空港にある名古屋税関検査場。違法薬物やコピー商品などが国内に持ち込まれないよう取り締まる“最後の砦”です。

 税関職員とともに手荷物検査をする、麻薬探知犬。カバンや服の臭いなどから異臭がしないかを確認します。

 すると、犬が飛び掛かります。1人の日本人男性のカバンに反応を示しました。タイから帰国したという男性。違法薬物を所持しているのか…。

 「荷物検査しますね。タイでそういったもの(違法薬物)を吸ったりした?」(検査官)
 「そういう暇はないですね」(男性)
 「大麻ショップに入ったりするとそこで臭いが充満していて」(検査官)
 「ないと思いますけどね」(男性)

 男性は、大麻ショップには行っていないと主張。ところが…。
 
 「これ大麻ショップで買ったやつ?」(検査官)
 「はい、そうですね」(男性)
 「(大麻ショップに)行ってないと言っていたけど?」(検査官)
 「行ってはないけど(イベント)会場でもらった」(男性)
 「使ってるよね?」(検査官)
 「僕は使ってないですね」(男性)
 「誰が使ったの?1人で行ったって言ってたけど?友達が吸ったと?」(検査官)
 「そうですね」(男性)
 

大麻の絵が描かれた袋

カバンの中から見つかった微量の大麻
 説明が二転三転します。すると―

 「これ“カス”入っとるね」(検査官)

 苦笑いで、ごまかそうとする男性。なんと、カバンの中からは、大麻の絵が描かれた袋が。中には、数ミリの植物片も入っていました。

 「それ以外にあるなら正直に言って欲しい」(検査官)
 「ないと思います。それだけだと思います」(男性)
 「ないって言ってこんなのあるもんで細かく見させてもらうよ」(検査官)

 他に新たなものは見つかりませんでしたが、植物片は大麻と判明しました。

 「これだけの量(微量)なので、今回はこれで終わりますけど、ちょっと量があるとここで1つの事件ということになるかもしれない。持って来ないようにしてください。そこだけは注意してください」(検査官)
 「はい」(男性)
 「次やったらこういうことでは済まない。今日の記録は全部残しておきます」(検査官)

 今回見つかった大麻は、数ミリの小さな植物片だったため、税関は、男性を厳重注意に留めました。
 

違法薬物が隠される場所「ボードゲーム」

違法薬物が隠される手口は巧妙化
 1日あたり、約6000人が通る名古屋税関検査場。新型コロナの影響で減少した旅行客も、4月には、2020年1月時点と比較すると約6割回復しています。

 名古屋税関では、去年、航空機の旅客によって持ち込まれた違法薬物を15件摘発していて、これは、おととしの7.5倍と大幅に増加しています。

 違法薬物が隠される場所は、ボードゲームの中であったり、「茶筒」の中であったりと、手口は巧妙化しています。

 さらに、ズボンのボタンに覚醒剤の成分が混ぜられていたケースもありました。

 ヨーロッパから来た男性。世界各地で、フィギュアの展示会を開いていて、この日来日したといいます。
 

「コカイン」の陽性反応

フィギュアからコカインの陽性反応
 男性の荷物からふき取ったものを、成分を判別できる機械にかけると、アラート音と共に表示された「コカイン」の文字。違法薬物の陽性反応が出ました。

 別の部屋で、追加の検査を行うと、次に目を向けたのは、厳重に梱包された男性の荷物。中から出てきたのはいくつもの大きなフィギュアです。

 フィギュアを包んでいた緩衝材をふき取り、再度検査機で調べると、ここでもコカインの陽性反応が出ました。

 「コカインは?コカインは?」(検査官)
 「ノーノ―。コカインは持っていないよ」(外国人男性)

 この後も男性は、コカインを持っていないとの主張を繰り返しました。約1時間半後、詳しく調べた結果、男性はコカインを所持しておらず、フィギュアの表面などにうっすらとコカインが付着していたことが分かりました。
 

コカインが付着した「フィギュア」

来場客の手から付着したか…
 一体なぜ、付着したのでしょうか。

 「展示物(=フィギュア)を、他の(来場した)方も触っているということもあったので、それでついたのではないか」(検査官)

 フィギュアは、これまでに欧米での展示会に出品されていて、来場客や関係者が手で作品などに触った際、コカインが付着した可能性があるということです。

 名古屋税関は、付着したコカインを取り除き、荷物を男性に返却しました。
 

世界各地から送られてくる郵便物

郵便物にも目を光らせる
 中部空港に隣接する中部外郵出張所。名古屋税関は、世界各地から送られてきた郵便物にも目を光らせています。その数、1日2000個を超える日も―。

 「輸入郵便物には必ず送り状が張り付けられているので差出人情報とか名宛人情報、品名、数量、価格とかそういう情報と、X線の画像と事前の情報などに基づいて総合的に選定している」(中部外郵出張所 統括審査官・加納和幸さん)

 この日、アメリカから送られてきた大きな郵便物。2人がかりで慎重に確認してみると、中からは人気キャラクターの絵画が出てきました。
 

正規品の絵画

絵画に覚醒剤が練りこまれたケースも
 過去には、キャンバス部分に覚醒剤が練り込まれ国際郵便で送られてきたこともあります。絵画の梱包材をふき取り、さっそく検査機で成分を確認してみると。

 違法なものは、検知されませんでした。

 職員は、キャンバス部分も慎重に調べていきます。検査の結果、違法薬物はなく、作品も正規品であることが判明しました。

 名古屋税関が、去年1年間で差し止めた知的財産を侵害する物品は、約10万点にのぼります。
 

偽物とみられるスニーカー

人気ブランドの偽物とみられる靴が大量に
 そして、この日届いた郵便物にも―

 「一番上のほうにはいわゆるノーブランドの問題のない靴が詰められていまして、一番底の下層部分にナイキの商標権を侵害する疑いのあるものが隠されていたという状況です」(中部外郵出張所 知的財産調査官・石瀬裕規さん)

 中国から送られてきたという、こちらの段ボール。なんと、ピンク色の靴の下に人気ブランドの偽物とみられる靴が大量に隠されていました。

 「過去のそういった摘発事例、そういったものを頭に入れて同じような荷物が来た時には的確に選定して検査をして社会悪の摘発に努めている」(中部外郵出張所 統括審査官・加納和幸さん)

 違法薬物やコピー商品を国内に持ち込ませない。国民の安全と貿易秩序を水際で守る名古屋税関の闘いはこれからも続きます。
 

これまでに入っているニュース

もっと見る

これまでのニュースを配信中