これってカスハラ?進む企業のカスハラ対策

2024年9月14日 14:06
いま、社会問題になりつつあるカスタマーハラスメント、略してカスハラ。従業員の心や体を守るため、東海地方の各企業が相次いで、その対応方針を公表しています。
 中部空港で行われた、ANA中部空港カスタマーサービススキルコンテスト。 空港でカウンター業務を行うスタッフが、接客のスキルや知識を競い、中部空港の「おもてなしのグランプリ」を決めます。

 基本的な接客スキルのほか、お客さんの心情に寄り添った対応などが審査のポイント。出場者はステージの上で、日ごろの成果を披露しました。

「仲間の接客を共有して、接客力とかお客様対応力を高めていきたい」(ANA中部空港旅客サービス部 三丸百合部長)
 

ANA中部空港旅客サービス部 三丸百合部長

約半数の人がカスハラの被害に
 気持ちよくサービスを利用してもらうため、スタッフ側もさまざまな努力をしている一方で、サービス業全般を悩ます課題もあります。

 カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」です。
 
 食品や流通業などで組織される労働組合、UAゼンセンの調査によりますと過去2年以内にサービス業に従事する人で、カスハラ被害にあったのは約47%にものぼります。

 暴言を浴びたり、長時間の拘束を受けたり、多くはないもののSNSでの誹謗中傷や土下座の強要があったという回答もありました。
 

アオキスーパー日進店 田中孝典店長

従業員を守るため、対策をする企業も
 愛知県内で51店舗を展開する「アオキスーパー」。これまでもカスハラに悩まされることがあったといいます。

「利用客が恫喝してきたりや金品を要求したりなどの事例があった。従業員が休職に追い込まれたり、退職に追い込まれたりする。こういった深刻な流れもある」(アオキスーパー日進店 田中孝典店長)

 従業員に大きなストレスがかかるカスハラ。こうした状況を受け、アオキスーパーは7月、「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定しました。
 
 過剰または不合理な要求、過剰な時間的・場所的拘束などをカスハラだとして、店舗の利用をお断りすると強い姿勢で臨むことが明記されています。

「被害にあった従業員のモチベーションやパフォーマンスが低下している。そういった観点からカスハラに対する基本方針を策定した」(田中店長)
 

店の入り口に貼られた紙

利用客へのアピールで対応をしやすく
 JR東日本やANAなど大手企業が続々とカスハラ対策を発表したことを受け、アオキスーパーでも基本方針を策定することが決まったといいます。

 さらに店の入り口には「STOP!カスタマーハラスメント」と書かれた紙を貼りだしました。
 
 利用客へのアピールをすることで、対応がしやすくなったといいます。
 
 基本方針の策定後、実際にカスハラとみられる事案があった時も途中で対応を打ち切る判断をしたといいます。

「我々もきちんと謝罪し、申し訳ございませんでしたと対応した。ですが利用客が納得しなかった。保健所に持っていくぞなどいろんなことを話していた。毅然とした対応をするということで、我々も泣き寝入りにすることなく対応した」(田中店長)
 
 店としても従業員の心身の健康などを守ることを優先すべきだと考えています。

「今までだったら策定文がなく、私たちももしかしたらおびえながらお客様に対して接していたかもしれない」(田中店長)
 

南山大学 緒方桂子教授

具体的なマニュアルで従業員の心理的負担を軽減
 企業独自での策定が広がっているカスハラ対策。南山大学で労働法について研究する緒方桂子教授はーー

「企業の中に何らかの対策のマニュアルがあったといった企業と、そうではなかった企業では、労働者の心理的負担や、離職の傾向などが明確に差が出た。(緒方教授)

 具体的なマニュアルがあることが従業員の働きやすさにもつながるといいます。

「マニュアルがあることで、どういう対応をするかが明確になる。明確であると、対応する側も落ち着いて対応ができる。謝り続けて怒りが過ぎるのを待っていただけというよりも、精神的負担は大きく違ってくる」(緒方教授)
 

カスハラと対応例

従業員を守る取り組みをする企業は他にも
 ほかにも「従業員を守る」取り組みをする企業があります。

 スーパーマーケットのヤマナカや名鉄グループは「毅然とした態度で対応する」としてカスハラに対する方針を公表しています。 

 ヤマナカは従業員への誹謗中傷や暴力行為だけでなく、同じ言動を繰り返したりする場合などにも対応の打ち切りや退店をしてもらう場合があるとしています。

 名鉄グループは土下座の強要や不当な金銭補償や謝罪の要求、さらに無断で従業員を撮影してSNS上で公開し誹謗中傷するなどの行為もカスハラに当たるとしています。

 専門家はこのように明文化されていることで、従業員がカスハラに対して落ち着いて対応できるとしています。
 

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