「人権意識が低い」検証委に突き付けられた名古屋の河村市長が反省の弁 障害者差別発言問題 

2024年9月18日 19:51
木造天守をめぐる名古屋市の討論会で障害者に向けられた差別発言について検証委員会が最終報告をまとめました。
 18日に最終報告をまとめたのは「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」での障害者差別発言をめぐる検証委員会です。

 発端は「名古屋城バリアフリー問題」。

 名古屋のシンボル「名古屋城」、戦災を経て鉄筋コンクリート造りで再建された天守は耐震性の問題などから改修が必要となりました。

 そこで市が目指したのが「史実に忠実な復元」。

 築城当時と同じ「木造」での復元です。
 

名古屋城にエレベーターを設置するかで意見が分かれる

焦点の1つは「バリアフリー」
 その中で焦点の1つになったのが「バリアフリー」です。

 障害者団体などは最上階までのエレベーター設置を求めてきましたが、河村たかし市長は「忠実に復元したい」と繰り返し主張。

 車いす用の小型昇降機を1階まで設置するなどの代替案を示してきました。
 

「市民討論会」の参加者

市民討論会で差別発言
 その中で「市民の意見を聞く場」として去年6月に開かれた「市民討論会」。

 現天守には5階まで昇れるエレベーターがありますが――

 「今まであったものをなくしてしまうというのは、我々障害者が排除されているとしか思えない」(参加した車いすを利用する男性)

 車いすの男性がエレベーター設置を求める意見を述べた直後、1人の男性が手を上げました。

 「平等とわがままを一緒にするな。エレベーターも電気もない時代につくられたものを再構築するということ、そのときになんでバリアフリーの話が出るのかなというのが荒唐無稽で、どこまでずうずうしいのという話。『がまんせいよ』という話なんですよ」(参加者)
 

討論会には河村市長も出席

河村市長、差別発言は「聞こえなかった」
 討論会には河村市長も出席していました。

 市主催の討論会で出た差別発言について問われると「聞こえなかった」としたうえで――

 「ご自由に言ってもらうのが前提。広い気持ちで考えるのが普通。言論の自由は」(名古屋市 河村たかし市長)

 去年8月、この差別発言に市がその場で対応できなかった原因の究明や再発防止策を議論する検証委員会が立ち上がりました。

 去年のうちに予定されていた文化庁への計画提出も検証が終わるまで中断されることとなりました。
 

「市長や市職員の人権問題への意識の低さ」が要因の一つと指摘

最終報告書に記載された内容は?
 そして、先ほどまとめられた最終報告書。

 市長らが出席した市民討論会で差別発言を止められなかったことについては「市長や市職員の人権問題への意識の低さ」が要因の一つと指摘。

 さらに――

 「いくつもの解釈が可能な形で市民への情報発信があり、討論会がどういう目的で実施されたか不明確なものになった。激しい対立が持ち込まれ、差別発言を生じる素地をつくった」(検証委員会 田中伸明委員長)

 「討論会」という名称が参加する市民が対立する意見の相手に強く主張するという展開を招き、差別発言が発せられるきっかけになった可能性があり、名称として不適切だったとしました。
 

検証委員会は「実効性のある人権条例の制定」を求める

「実効性のある人権条例の制定」を求める
 また市長は当日の差別発言は聞き取れていなかったとしていましたが、公職者として差別は許されないという市の立場を明確に強く表明するべきであったと主張。

 その上で検証委員会は既に制定されている条例を補完する、実効性のある人権条例の制定を求めました。

 最終報告書を受け取った河村市長は――

 「希薄だというのは自分の認識と違うが、それでも気付くべきだった。こういう発言が出ることに心の準備をしておくべきだったと言われれば希薄だった。世界一のバリアフリー都市を作っていく」
 

河村市長

河村市長は従来の主張を繰り返す
 「世界一のバリアフリー都市」という発言に、検証委員会の委員長は――

 「今後、最終報告書を市長によく見て頂き、提言のところをしっかり受け止めていただけると信じている」(田中委員長)

 一方で、発端となったエレベーターの設置について河村市長は従来の主張を繰り返しました。

 「天守は別個の文化財として、ただ一つしかない名古屋城の宝。本物を大事にしていくことも人権ですから」(河村市長)

 Q.エレベーターを5階までつけたくない
 「そうですよ」(河村市長)
 

「市長や市職員の人権問題への意識の低さ」を指摘

最終報告に当事者が思うこと
 最終報告を当事者はどう受け止めたのでしょうか。

 検証委員会を傍聴した障害者団体のメンバーは――

 「人権意識が低いと思う。特に市長の人権意識が低い」(傍聴した男性)

 報告書で指摘された「市長や市職員の人権問題への意識の低さ」について、これまでも感じるところがあったといいます。
 

傍聴した男性

「一からやり直す以外、解決策はない」
 また対策として、障害者差別の解消のための新条例制定が提言されていますが――

 「(条例は)つくらないよりは、つくったほうがいいと思う。どういう形で具体化してくかが大切」(傍聴した男性)

 そして名古屋城のエレベーター設置をめぐっては――

 「木造天守を復元して、5階までのぼれるのがベストだが、仮にそれができないのなら、誰ものぼれないようにして、外から見るだけにするか、木造天守なんてあきらめて現在の名古屋城を再建する方が僕はいいんじゃないかと思う。一からやり直す以外解決策はないと思う」(傍聴した男性)
 

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