【こどもを守る】路面に様々な工夫「ゾーン30プラス」“物理的な対策”で通学路を安全に

2024年10月8日 07:01
子どもが被害にあう交通事故が後を絶ちません。約23%が登下校時に起きています。通学路の事故から子どもを守るためのさまざまな対策を取材しました。

ゾーン30プラス

 日没の時間が早くなってくるこの季節。

 午後5時から午後7時までの時間は、車と歩行者との事故が増えることから“魔の時間”と呼ばれています。

 特に危険なのは、車同士がすれ違うタイミング。

 “魔の時間”の暗さを再現して行った実験では、ライトをつけた対向車の前を歩行者に歩いてもらいました。

 すると、対向車と自分の車が照らすライトが重なることで、一瞬、歩行者の姿が見えなくなってしまうことが分かりました。

 「非常に見えづらくなってくるのが1番。ドライバーとしては見えなくなるものが歩行者や自転車で、高齢者や子どもとの事故が多くなってくる」(JAF 愛知支部 吉田英治さん)

 特に、周囲への安全確認がおろそかになりがちな子どもは、注意が必要です。

 愛知県警によりますと、15歳以下の子どもが被害にあう交通事故のうち約23%が「通学時」の事故なんです。

 2021年、千葉県で下校中の小学生の列にトラックが突っ込み、5人が死傷する事故が起きました。
 

歩行者専用道路の標識

歩行者専用道路でも車が続々と
 その後も子どもが巻き込まれる事故が後を絶たず、9月30日、名古屋市中村区で警察官が小学校の通学路の見守りを行いました。
  
 実は、この道路は、時間帯によって通行制限がかけられているんです。

 「標識があるがここは通学路で、午前7時半から8時半は、小学校の東側が歩行者専用道路になる。ただここが車の堤防道路から大きな幹線道路への抜け道として使われている」(中村警察署 交通課 森本正樹 課長)

 この場所に定点カメラを設置し、1時間、観察しました。

 「歩行者専用道路の時間ですが、車が通り抜けていきます」(記者)

 本来は、歩行者専用の時間帯にも関わらず、車が進入し、速度を落とさずに直進していきます。

 「なかなかのスピードで通る車もあるので、危ないなというのは見かける」(近所の人)
 「堤防から降りてくる道なので、降りてくる人がいると思う。学校の近くで子どもが歩いていると、ドライバーに分かってもらうといいなと思います」(小学校に通う子どもの保護者)

 この日は、8台の車や原付バイクが通っていきました。

 「通学路は決まった時間に大勢の人がまとまって来るので、運転手は高い注意力をもって、子どもはどのような行動をするか分からないし、大人と違って飛び出す可能性もあるので、注意が必要だと思っています」(森本課長)
 

道路に段差ができているよう錯覚させるデザインを標示

“物理的な対策”で子どもの安全を守る
 通学路を利用する「こどもを守る」ための工夫は、年々進歩してきています。

 愛知県大府市にある北山小学校の近くでは、「物理的な対策」で子どもたちの安全を守っています。

 「小学校の東側にあるのはスムーズ横断歩道と呼ばれる横断歩道です。緩やかな傾斜がついていて、車がスピードを出しにくいようになっているといいます」(記者)

 横断歩道の前に、10cmほどの傾斜をつけて、車のスピードを落とさせたり、道路にポールを設置することで、道幅を狭くしたり、これらはすべて「ゾーン30プラス」と呼ばれる交通安全対策です。

 「ゾーン30プラス」とは、速度30キロの規制のほか、車のスピードを落とすように仕向ける対策をしたエリアのことで、県内7カ所に設置されています。

 大府市以外にも、名古屋市瑞穂区の汐路西などにあり、交差点にカラー舗装が施されていたり、車内から見ると道路に段差ができているように錯覚させるデザインを路面に標示したりしています。

 「『ゾーン30』や『ゾーン30プラス』は、小学校の通学路や高齢者施設、公共の施設が含まれる場所が選定されるので、小学生の交通事故防止に効果を発揮しています」(愛知県警 交通規制課 橋本博史 次長)
 

愛知県警 交通規制課 橋本博史 次長

ドライバー1人1人の「こどもを守る」意識が重要
 愛知県警によりますと、「ゾーン30」のエリアでの人身事故は設置後1年間で19%減ったということです。

 北山小学校周辺では1年前に設置され、実際にスピードを出す車は減ったといいます。しかし――

 「ドライバーが段差があるのかなということで、スピードを減速する効果はあると思うが、正直慣れてしまうと、何も段差はないと分かった人には、スピードを落とす効果は薄れているかと思う」(大府市立北山小学校 久保裕一 教頭)

 子どもたちの安全が求められる通学路について、愛知県警は、物理的な対策に頼ることなく、ドライバー1人1人の「こどもを守る」意識が重要だと話します。

 「ドライバーは速度を落として走行するよう注意してもらいたいと思います」(橋本次長)
 

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